子育てを終え、「これからは自分たちの老後をゆっくり楽しもう」と考えていたはずの親世代が、再び子どもの経済的支援に追われるケースが散見されます。親として支援したいという思いは理解できますが、これにより自身の老後資金が枯渇するリスクも否めません。そこで今回、60代夫婦と40歳息子の事例をもとに、親子双方にとってできるだけ早く取り組むべき対策をみていきましょう。大竹麻佐子CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
詐欺のほうがマシでした…年金暮らしの60代夫婦、40歳息子からの「100万円貸して」LINEに不信感→アポなしで向かった長男宅で目にした"まさかの光景"【CFPの警告】
4人に1人が子や孫へ仕送り…その支援は「本当に必要」か?
総務省「令和6年度高齢社会対策総合調査」によると、60歳以上の男女2,188人のうち、金額の多寡を問わず、子や孫の生活費を負担している人の割合は25.2%でした。
なかには、年間110万円以内の非課税枠を活用した「生前贈与」のケースもあるでしょう。しかし、非正規雇用の増加や物価高騰の影響で、生活に余裕がない子世代が一定数存在するのも事実です。
資金援助において注意すべきは、「(子どもの)生活が成り立っていない=仕送りが必要」と短絡的に結びつけるのではなく、なんの目的で支援が必要なのか、いつまで必要なのかという冷静な“線引き”でしょう。
状況を確認しないまま支援を続けると、依存や浪費を助長するリスクも否定できません。
連絡不精な息子から届いた「1通のLINE」
都心から電車で1時間半。緑の多い郊外の自宅で、Aさん(68歳)と妻Bさん(67歳)は穏やかな老後を過ごしていました。定年後仕事はしておらず、年金生活です。
「現役時代は通勤が大変だったけれど、ここは静かで人の流れも穏やかだし、住むにはちょうどいいな」と、散歩やガーデニングなど、思い思いの理想の老後を過ごしていました。
しかし、そんなある日のこと。長年会っていない、連絡不精のひとり息子Cさん(40歳)から、Bさんのもとに突然LINEが届きました。
「久しぶり。いきなりで申し訳ないんだけど、100万円貸してくれない?」
「C、どうしたの? なにがあったの?」
久しぶりの連絡に驚きながらも、すぐに状況を訊ねますが、返事はありません。
突然の連絡に戸惑ったBさんは、すぐにAさんに相談しました。