「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉をご存じでしょうか。これは、会社で与えられた必要最低限の仕事だけをこなし、それ以上の貢献やキャリアアップを求めない働き方を指します。“誰よりも遅く出勤して誰よりも早く退勤する”竹内昌仁さん(仮名・55歳)もこの働き方を実践するひとりです。「なんで辞めないんだ」などと陰口をたたかれることもあるようですが、本人はまったく気にしていません。いったいなぜなのか、詳しくみていきましょう。
あいつ、なんで辞めないんだ?…年収400万円の55歳“万年ヒラ社員”が「誰よりも遅く出勤して誰よりも早く退勤する」ワケ。上司が黙認する衝撃の事実【CFPの助言】
周囲の目なんて関係ない…55歳“万年ヒラ社員”の日常
「『あいつ、なんで辞めないんだ?』と言われているのを耳にしたこともあります(笑)」
筆者が登壇するセミナーをきっかけに知り合った竹内さんは、そう笑いながら話してくれました。
年収400万円の竹内昌仁さん(仮名・55歳)は、出世とは無縁の会社員です。
毎日遅刻ギリギリに出社し、オフィスの隅の席で黙々と仕事をこなし、定時ぴったりに退社。現場の感覚としては「定時より前に帰っている」と思えるほど、鮮やかに姿を消します。
竹内さんがこのような働き方を選択したのはいったいなぜなのでしょうか。
上司も黙認…“万年ヒラ社員”の秘密
実は竹内さん、親の相続をきっかけに、20年ほど前から不動産投資をはじめたそうです。相続した1,000万円を元手に築30年の中古マンションを購入し、それ以来、給与とは別に家賃収入を得る生活を送っています。
入居者が途切れることはなく、大家業は順調そのものだったものの、やがて老朽化にともなう修繕リスクに不安を抱くようになりました。そんな矢先、不動産市場の価格上昇のタイミングを見事に捉えて売却に成功。新たな物件を購入し、賃料収入を増やします。
そのほかにも、個別株や投資信託など、金融資産の運用にもコツコツ取り組み続けた結果、総資産はついに1億円を突破したのでした。
また竹内さんは、一度会社に退職を申し出たことがありました。しかし、勤務先の人手不足という背景もあり「頼むから残ってくれないか」と上司に引き留められ、勤務を続けているという経緯があります。そのため竹内さんの勤務態度をとがめる上司はいません。
竹内さん自身も、厚生年金や健康保険といった、会社員ならではの手厚い「社会保険制度」の恩恵を踏まえ、定年までいまの生活を続けるつもりです。
「竹内さんがラッキーなだけ」ではない
竹内さんが資産1億円に到達できた背景には、「早い段階で第2の収入源を確立し、時間を味方につけたこと」が大きく影響しています。
相続で受け取った1,000万円を浪費せず、収益を生む不動産や投資に回したことで、賃料収入と金融資産の複利効果が時間の経過とともに利益を積み上げていきました。
「不動産投資なんて高収入で余裕のある人しかできない」と考える人も多いでしょう。しかし実際には、収入の多寡よりも「時間」と「継続」が資産形成の成果を左右します。
資産形成において重要なのは、一度に大きな資金を投入することではなく、失敗を最小限に抑えながら「続けられる仕組み」をつくることです。
生活費と仕事は会社に依存しつつ、投資による収入をもう1つの柱として資産を築いていく。現役世代のうちに複数の収入源を確立しておけば、老後の自由度は格段に高まります。