不動産価格が高騰を続ける昨今、タワーマンション(以下、タワマン)に住むことは“一種のステータス”だといえるでしょう。しかし、「タワマンに住む」ことに執着しすぎた場合、日々の生活の質や家族の幸福が犠牲になってしまうかもしれません。「湾岸タワマン」を購入した40代夫婦の事例をもとに、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
「やめとけ」という周囲の声を無視…ペアローン7,000万円で「湾岸タワマン」を買った世帯年収1,000万円・40代夫婦の本音【CFPの助言】
「湾岸タワマン」からの引っ越しを検討するワケ
しかし今では、毎月のローン返済はもとより、次の3つの理由から「引っ越し」を考えはじめたといいます。
2. 娘の教育資金を優先した生活の実現
3. 将来の不動産価格の懸念と本音
1. 毎月支払う諸費用が適正か疑問
まず、タワマンの華やかなエントランスホールやゲストルーム、各階のゴミ置き場に廊下の空調など、設備には申し分ありません。しかしその分、共益費や修繕積立金などの諸経費は高額です。なかでも修繕積立金は、今後大規模修繕を行う際の徴収額が定かでなく、疑問を持ちはじめました。
国土交通省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ(令和5年8月)」によると、「超高層マンション(20階以上のマンション)は、特有の修繕工事項目※が存在するが、必ずしもその費用が長期修繕計画に盛り込まれていないケースがある」と記述があります。
※超高層マンション特有の修繕項目の例: 非常用エレベーター、 タワーパーキング、 内廊下の空調設備、セントラルヒーティング、スプリンクラー、航空障害灯、ヘリポート、非常用発電設備、免震装置、エスカレーターなど
2. 娘の教育資金を優先した生活の実現
夫婦は、現在10歳(小学校4年生)の娘を私立の中高一貫校に入学させて、その系列の大学に進学させたいと考えているそうです。娘もその中学のオープンスクールに参加して、学校が気に入ったといいます。
そのため、今後子どもの教育費が増加することは明らかですが、現在の家計にそのための貯蓄をする余裕はありません。そこで、目指す学校や進学塾に近い住宅地域に住むのはどうかと考えたそうです。
3. 将来の不動産価格の懸念と本音
2025年7月、東京都千代田区は不動産の業界団体に対して、市街地再開発事業などで販売するマンションに「引き渡しから原則5年間の転売禁止」「同一名義で複数戸購入禁止」を特約として契約に盛り込む要請を出しました。昨今の不動産価格の高騰と、背景にある外国人による転売目的の不動産購入を抑制するのが目的のようです。
Aさんは、今後ほかの自治体でも同様な要請が出されると、不動産価格に影響がでると考えたといいます。
夫婦はタワマンを終の棲家とするのではなく、住み替えるなら今のうちにと考えたのです。