老後2,000万円問題をきっかけに老後資金に対する国民一人ひとりの意識が高まっています。ただ、金融教育が浸透していない日本では、お金を貯めることはできても、そのお金を“上手に使える人”は多くないようです。とある男性の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
貯金額1億円の65歳元サラリーマン、年金生活突入後に「毎日が地獄です」のワケ【CFPの助言】
Aさんの「虚無感」と「ストレス」を和らげる具体的なプラン
とはいっても、これから具体的にどうしたらいいのかわからない。とAさんは言います。そこで次回の面談までに、次の3点を、夫婦別々に作成してもらうことにしました。
1.お金のことは考えず、何歳になったら何をしたいか書き出す
2.孫の進学祝いなど、すでに期日の決まっている項目と予算を書き出す
3.月曜日から日曜日まで、自分の時間割を作る
筆者が話したところ、Aさんは腑に落ちないような顔をしていましたが、とにかくまずは書いてもらうことになりました。
現役時代は会社を中心にスケジュールを立てればよいですが、退職後はそうはいきません。すべての曜日の日課を決めないと、ただただお金が減っていきます。まさに現在のAさんの状況です。Aさんが「地獄だ」と悩んでいる現状を打破するためにも、時間割は必要なツールでしょう。
A夫婦のセカンドライフプランが完成
A夫婦はしばらくして、連れ立って筆者のところを訪れました。
「これから何をするか、1つ書いたら『あれもこれも』と止まらなくなってしまって……こんなにもありました」
Aさんはそう言って数十項目にもおよぶ計画を見せてくれました。
そして「これから忙しくなりそうです。ただ、妻が書いたものを見せてもらうと、お互い海外旅行に行く計画はありますが、行き先で一致したのは、フランスの古城めぐりとハワイだけでした。ほかにもしたいことはまったく違っていました。これだけ違う想いを持って、よくここまで一緒に生活できましたよ」と、夫婦で笑っていました。
そこで筆者は、夫婦の希望を叶えるため、旅行に限らず、今後の生活費や家の修繕費、介護や看護の費用、子どもや孫への援助や相続などを含め、各支出のシミュレーションをしながら、上限を決めた予算化をしました。
その結果、1,650万円ほど貯蓄が残るセカンドライフの行動プランが完成しました。
夫婦が亡くなった後に貯蓄が残っていれば、自宅を含め、ふたりの子どもが均等に相続します。相続の方法は、この先子どもを交えて決めていきます。
ただ、今後の収入は年金に限られ、また物価も高騰しています。計画通りに実行するか内容を縮小するか、臨機応変な対応も大切です。