Aさんの「虚無感」と「ストレス」を和らげる具体的なプラン

とはいっても、これから具体的にどうしたらいいのかわからない。とAさんは言います。そこで次回の面談までに、次の3点を、夫婦別々に作成してもらうことにしました。

1.お金のことは考えず、何歳になったら何をしたいか書き出す

2.孫の進学祝いなど、すでに期日の決まっている項目と予算を書き出す

3.月曜日から日曜日まで、自分の時間割を作る

筆者が話したところ、Aさんは腑に落ちないような顔をしていましたが、とにかくまずは書いてもらうことになりました。

現役時代は会社を中心にスケジュールを立てればよいですが、退職後はそうはいきません。すべての曜日の日課を決めないと、ただただお金が減っていきます。まさに現在のAさんの状況です。Aさんが「地獄だ」と悩んでいる現状を打破するためにも、時間割は必要なツールでしょう。

A夫婦のセカンドライフプランが完成

A夫婦はしばらくして、連れ立って筆者のところを訪れました。

「これから何をするか、1つ書いたら『あれもこれも』と止まらなくなってしまって……こんなにもありました」

Aさんはそう言って数十項目にもおよぶ計画を見せてくれました。

そして「これから忙しくなりそうです。ただ、妻が書いたものを見せてもらうと、お互い海外旅行に行く計画はありますが、行き先で一致したのは、フランスの古城めぐりとハワイだけでした。ほかにもしたいことはまったく違っていました。これだけ違う想いを持って、よくここまで一緒に生活できましたよ」と、夫婦で笑っていました。

そこで筆者は、夫婦の希望を叶えるため、旅行に限らず、今後の生活費や家の修繕費、介護や看護の費用、子どもや孫への援助や相続などを含め、各支出のシミュレーションをしながら、上限を決めた予算化をしました。

その結果、1,650万円ほど貯蓄が残るセカンドライフの行動プランが完成しました。

夫婦が亡くなった後に貯蓄が残っていれば、自宅を含め、ふたりの子どもが均等に相続します。相続の方法は、この先子どもを交えて決めていきます。

ただ、今後の収入は年金に限られ、また物価も高騰しています。計画通りに実行するか内容を縮小するか、臨機応変な対応も大切です。