老後2,000万円問題をきっかけに老後資金に対する国民一人ひとりの意識が高まっています。ただ、金融教育が浸透していない日本では、お金を貯めることはできても、そのお金を“上手に使える人”は多くないようです。とある男性の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
貯金額1億円の65歳元サラリーマン、年金生活突入後に「毎日が地獄です」のワケ【CFPの助言】
シニアはなににお金を使っているのか?
現在のAさんの生活について尋ねたところ、退職後は毎月約30万円の支出で生活しているとのことでした。
また収入は老齢厚生年金が月24万円、68歳からは妻の分も含めて月29万円受給予定なので、多少貯蓄を取り崩しても、年金だけで生活できると考えていること。
それに加えて、1億円の貯蓄を100歳まで均等に取崩していくと、毎月23万8,000円となり、十分生活はできると思っている。だけどむやみにお金を使うことは怖い、ということです。
高齢者の消費と家外活動
では、Aさんと同世代の人はどんなことにお金を使っているのでしょうか。
内閣府「令和元年度高齢者の経済生活に関する調査結果(全体版)」の「今後優先的に使いたい支出項目は何か」によると、次のとおりです。
■趣味やレジャーの費用……60代後半47.6%(全体40.4%)
■食費……60代後半32.3%(全体31.3%)
■保険医療関係費……60代後半18.7%(全体20.5%)
■子や孫のための支出(学費含む)……60代後半23.8%(全体19.1%)
■友人等との交際費……60代後半13.3%(全体12.8%)
また同府「令和5年度高齢社会対策総合調査(高齢者の住宅と生活環境に関する調査)の結果(概要版)」では、「この1年間に個人または友人、グループ、団体で自主的に行われている活動したか」の問いに、次のような結果が出ています。
■「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」……60代後半29.2%(全体30.3%)
■地域行事(祭りなどの地域の催しものに参加)……60代後半23.1%(全体21.9%)
■趣味(俳句、詩吟、陶芸等)……60代後半16.7%(全体15.9%)
■生活環境改善(環境美化、緑化推進、まちづくり等)……60代後半13.6%(全体11.9%)
■地域行事(祭りなどの地域の催しものの世話等)……60代後半11.6%(全体10.3%)
なお、1年間に活動または参加した割合は63.2%、していない割合は35.3%となっています。
これらの結果を見たAさんは、自分と同じように家でじっとしている人もいると、少し安心した様子でした。また、お金を使うことの抵抗感も少しは薄らいだそうです。