自分に万が一のことがあった際、家族に負担をかけないための終活は、相続争いをはじめ親族間のトラブルを避けるために有効な対策です。しかし、誤った認識で終活を進めると、生きている自分たちの家計に深刻な影響をおよぼしかねません。そこで今回、とある夫婦の事例をもとに、「終活」に潜む注意点をみていきましょう。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
終活よ、これは終活…定年退職時の貯金は5,000万円、年金月26万円を受け取る70代夫婦が「破産寸前」のワケ。きっかけは“目覚めた”妻の暴走【CFPの助言】
終活は「人生観」によって変わる
終活とは一般的に、自分が元気なうちに遺産相続や身の回りの整理、葬儀・お墓の準備、医療・介護の希望などを事前に決めて、「エンディングノート」などに書き留め、残された家族の負担を減らすための活動を指すことが多いです。
自治体や信託銀行、葬儀会社、保険会社などが主催する「終活セミナー」に参加したり、関連の書籍や新聞などを読んだりすれば、終活のヒントを得ることができるでしょう。
ただし、自分に都合のいいように解釈して行動すると、資産を無駄使いして、老後の家計に影響をおよぼしかねません。
終活をはじめて「貯金が激減」したA夫婦
都内から車で約1時間、郊外の戸建て住宅に暮らすAさん(78歳)と妻Bさん(74歳)。Aさんが60歳で定年退職すると、その後は再就職することなく、夫婦水入らずの老後を過ごしています。
現在の収入は、老齢厚生年金を夫婦で月26万円ほど受給しています。60歳から65歳までは、受給した特別支給の老齢厚生年金(月あたり約13万円)だけでは生活できず、貯金を取り崩していました。とはいえ、Aさんが定年退職した当時の時点で、退職金の1,000万円を含めて5,000万円ほどの貯金があったため、老後の金銭的な不安はなかったといいます。
そんなA夫妻、年を重ねるなかで食費など生活費が減ったこともあり、現在はほとんど年金だけで生活を賄えています。
自宅の修繕費など、予定していた支出も問題なく対応し、Aさん78歳・Bさん74歳の現在の貯金額はおよそ2,000万円です。2人の子どもは結婚して孫も誕生。満ち足りたセカンドライフを送っていました。