アラカン世代に潜む"契約放置リスク"の実態

修一さんのような「受取人変更の思い込み」は珍しくありません。生命保険は「契約者」「被保険者」「受取人」の三者関係で成り立ち、受取人変更は正式な手続きが必要です。「変更したつもり」では一切効力を持ちません。

公益財団法人生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によれば、60代の生命保険加入率は男女ともに約8割以上と非常に高い水準にあります。しかし、30代・40代で契約したもので、数十年放置されているケースも少なくないことでしょう。

思い込みが生まれる主な要因は次の通りです。

●複数契約の管理不備:更新型の契約は更新時に見直すが、終身保険は放置するケースも。「一度入れば安心」という意識から、保障内容を何十年も確認しない人が少なくありません。

●転職・再婚時の手続き漏れ: 住所変更は行っても、受取人変更まで気が回らないケースも。特に男性は「保険は妻任せ」と言いながら、実際には誰も管理していない場合があります。

●払済・減額時の誤解: 契約内容変更時に「受取人も自動変更された」と勘違いするケースが多いのですが、払済変更は保険料停止のみで、受取人はそのまま継続されます。

●持ち家による油断:「家賃がかからないから大丈夫」と安心してしまいがちですが、現実には固定資産税やメンテナンス費用など数十万円単位の出費が定期的に必要です。年金収入だけでは対応できず、思わぬ負担になるケースも少なくありません。

さらに、個人年金保険でも同様のトラブルがあります。横浜の田中さん(69歳)は、35年前に加入したいわゆる“お宝保険”の個人年金で、死亡時の受取人を40年間変更せず放置。その結果、疎遠な兄弟に支払われてしまいました。「個人年金だから死亡時のことまで考えていなかった」と妻は振り返ります。