人生100年時代というワードが定着した昨今。平均寿命が延び、長生きできるようになったことは喜ばしい限りです。しかし、いいことばかりではありません。「健康」「孤独」「お金」が老後の3大不安といわれるなか、老後の貴重な生活資金である年金への不安は増すばかり。不安を軽減するためには、年金以外に収入を得る手段を知っておくことが大切です。ここでは、その手段のひとつである「シルバー人材センター」について詳しく解説します。
年金だけでは暮らせない…貴重な老後の収入を増やす「シルバー人材センター」という選択肢【社労士が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

シルバー人材センターとは

 

年金だけでの生活が苦しければ、老後も働き続けるという選択肢があります。自営業であれば、年齢に関係なく働くことができますし、人手不足が深刻な今、65歳以降も働くことができる会社も増えています。シルバー人材センターも候補のひとつになるでしょう。

 

シルバー人材センターの概要

シルバー人材センターは、「高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、 地域社会の活性化に貢献する組織」(公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会HP)です。原則として市区町村単位に置かれており、運営は都道府県知事の指定を受けた社団法人が担っています。

 

その枠組みは、シルバー人材センターが家庭や事業所、官公庁等から仕事を引き受け、シルバー人材センターに加入している会員(定年退職者などの高年齢者)がその希望や能力に応じて就業するというもの。「シルバー人材センター事業年度統計」によると、令和4年度においては、全国に1,340団体、会員数は681,739人となっています。

 

シルバー人材センターでの主な仕事

シルバー人材センターでの仕事は、地域社会に密着した「臨時的かつ短期的な業務」(おおむね月10日程度以内)または「軽易な業務」(おおむね週20時間を超えないことが目安)です。

 

主な仕事の例は以下の通りです。

 

除草作業、植木剪定、ペンキ塗り、チラシ・ビラ配り、家事(料理・洗濯・掃除)援助、工場作業、小売店などの品出し作業やカート整理、建物管理(ビル、アパート・マンション管理など)、駐車場・駐輪場管理、屋内外の清掃・作業、会場設営(机や椅子・テント)、農作業(種まき、水やり、収穫など)、調理補助、高齢者介助など

 

シルバー人材センターへの入会方法

シルバー人材センターに入会するには、次の条件を満たすことが必要です。詳細は、近くのシルバー人材センターに確認してみましょう。

 

・原則60歳以上の健康で働く意欲のある方

・シルバー人材センターの趣旨に賛同していただいた方

・入会説明を受け、入会申込書を提出した方(理事会の入会承認が必要です)

・定められた会費を納入していただける方

(出典:公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会HP

 

働いた場合の収入は?

シルバー人材センターで働く場合、希望する仕事が常にあるわけではなく、一定した収入が保障されるわけでもありません。同協会HPによると、全国平均で月に8~10日程度働くと月額3~5万円ほどの収入になります。

 

ある程度の収入を得るには、やりたい仕事だけではなく、希望しない仕事や経験のない仕事にもチャレンジしてみる気持ちが必要です。

 

先にみた統計等では、年金と生活費の差が約3~5万円ですから、シルバー人材センターでの収入で差額を埋めることができます。夫婦ともにシルバー人材センターで働くことで、より多くの収入も見込めるでしょう。

 

働く際の注意点

シルバー人材センターで働くうえで覚えておきたいのは、センターとの契約は「雇用契約」ではないということ。

 

就業は基本的に「請負又は委任契約」なので、会社員のように労働者としての保護を受けることができないのです。たとえば、仕事中にけがをしても労災保険が使えませんし、仕事を辞めた場合でも雇用保険からの失業給付はありません。

 

ただし、シルバー人材センターでは民間の損害保険に加入しているので、就業中にけがをした場合や、就業場所までの往復途上でけがをした場合などに一定の補償を受けられることがあります。シルバー人材センターで働く際には、保険の内容を必ず説明してもらいましょう。

 

そのほかに知っておくべきこと

仕事の報酬は「配分金」として支払われます。「雇用契約」ではないので「賃金」にはならず、最低賃金法が適用されません。

 

また、「配分金」は給与所得ではなく雑所得となるため、その額が一定額を超えた場合には確定申告が必要です。なお、在職老齢年金の対象にならないので、年金が減額されることはありません。