家計の収支が急変…妻の“暴走”がはじまった

そんなある日Bさんは、自宅にポスティングされた、葬儀会社のチラシで「無料終活セミナー」が開催されると知り、興味を持ち参加しました。

はじめて終活セミナーに参加したBさんは、お葬式の種類と費用、お墓の準備など、有意義な話を聞けたと満足していました。また、聴講者から「エンディングノート」の作り方や所有物の生前整理、遺産相続の仕方、後見人や信託など、より詳しく教えてくれるセミナーがあると教えてもらいました。

そこでBさんは、さまざまな終活セミナーに参加するようになったのです。

「終活セミナー」に参加して貯金が激減

A家の家計は専業主婦だったBさんが管理していましたが、Aさんの退職後は2人で口座を管理していました。

そんななか、Bさんの“暴走”が家計に影響をおよぼしはじめます。Bさんが終活セミナーに参加するようになって以降、家計支出以外に支出のなかった貯金が、月に2万~3万円、多い月は10万円と減っているのです。

見かねたAさんがBさんにお金の使い先を問いただすと、「終活よ、これは終活。子どもたちに大変な思いをさせないためにも、元気なうちから動かなくちゃ」と、Aさんにとっては意味不明の回答を繰り返します。困ってしまったAさんは、FPである筆者のもとへ相談に訪れたのでした。

A夫妻に迫る「破産」の危機

Aさんは「Bが終活セミナーで知り合った同年代の人たちと、著名な講師を呼んで勉強会を開催したり、食事会や旅行に行ったりして、貯金がどんどん減っている。いまはまだ大丈夫だとは思うが、将来が心配だ」と嘆きます。

そこで筆者は、「貯蓄のうちの800万円から1,000万円は、今後ご夫婦の介護や看護費用に残しておきたい金額です。すると、貯金で取り崩せる金額はおよそ1,000万円。終活にそこまでの費用が必要か疑問ですし、家計が破産する終活はあり得ません。ここは率直に、どんな終活をしているのか詳しく聞きましょう」とAさんに伝えました。