自分に万が一のことがあった際、家族に負担をかけないための終活は、相続争いをはじめ親族間のトラブルを避けるために有効な対策です。しかし、誤った認識で終活を進めると、生きている自分たちの家計に深刻な影響をおよぼしかねません。そこで今回、とある夫婦の事例をもとに、「終活」に潜む注意点をみていきましょう。※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
終活よ、これは終活…定年退職時の貯金は5,000万円、年金月26万円を受け取る70代夫婦が「破産寸前」のワケ。きっかけは“目覚めた”妻の暴走【CFPの助言】
家計の収支が急変…妻の“暴走”がはじまった
そんなある日Bさんは、自宅にポスティングされた、葬儀会社のチラシで「無料終活セミナー」が開催されると知り、興味を持ち参加しました。
はじめて終活セミナーに参加したBさんは、お葬式の種類と費用、お墓の準備など、有意義な話を聞けたと満足していました。また、聴講者から「エンディングノート」の作り方や所有物の生前整理、遺産相続の仕方、後見人や信託など、より詳しく教えてくれるセミナーがあると教えてもらいました。
そこでBさんは、さまざまな終活セミナーに参加するようになったのです。
「終活セミナー」に参加して貯金が激減
A家の家計は専業主婦だったBさんが管理していましたが、Aさんの退職後は2人で口座を管理していました。
そんななか、Bさんの“暴走”が家計に影響をおよぼしはじめます。Bさんが終活セミナーに参加するようになって以降、家計支出以外に支出のなかった貯金が、月に2万~3万円、多い月は10万円と減っているのです。
見かねたAさんがBさんにお金の使い先を問いただすと、「終活よ、これは終活。子どもたちに大変な思いをさせないためにも、元気なうちから動かなくちゃ」と、Aさんにとっては意味不明の回答を繰り返します。困ってしまったAさんは、FPである筆者のもとへ相談に訪れたのでした。
A夫妻に迫る「破産」の危機
Aさんは「Bが終活セミナーで知り合った同年代の人たちと、著名な講師を呼んで勉強会を開催したり、食事会や旅行に行ったりして、貯金がどんどん減っている。いまはまだ大丈夫だとは思うが、将来が心配だ」と嘆きます。
そこで筆者は、「貯蓄のうちの800万円から1,000万円は、今後ご夫婦の介護や看護費用に残しておきたい金額です。すると、貯金で取り崩せる金額はおよそ1,000万円。終活にそこまでの費用が必要か疑問ですし、家計が破産する終活はあり得ません。ここは率直に、どんな終活をしているのか詳しく聞きましょう」とAさんに伝えました。