国税庁の「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、課税対象となった相続のうち、相続税額は平均1,930万円でした。思いがけない多額の遺産は“嬉しい悲鳴”かと思いきや、実際には家族が相続税に苦悩するケースも少なくないようです。亡き父の“サプライズプレゼント”に頭を抱えた59歳男性の事例をもとに、相続時の注意点をみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
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相続税が払えません…年収800万円の59歳サラリーマン、享年88歳・倹約家の父が遺した「サプライズプレゼント」に悲鳴【CFPの助言】
88歳の父が逝去…驚愕の相続財産に不安が募る息子
会社員のAさん(59歳)は、2歳年下の妻と都内の賃貸マンションで暮らしています。
Aさんの実家は都心から電車で1時間ほどの場所にある地方都市。Aさんは20年前に母親を亡くしており、その後ひとり暮らしをしていた倹約家の父Bさんも、先ごろ88歳で心臓疾患のため急逝しました。
Bさんは元々鉄工所を営んでいましたが、妻(Aさんの母親)が亡くなると同時に閉業。跡地に10室のアパートを建てて賃貸経営を行っていたそうです。
ひとりっ子のAさんは、四十九日の法要を終えた後、相続について相談するため鉄工所経営時代から世話になっていた税理士Cさんの事務所を訪ねました。
父が遺した“サプライズプレゼント”に悲鳴
税理士Cさんの話では、Bさんは1棟目のアパートを建てたあと、10室のアパートを別に2棟、時期をずらして購入していたとのこと。Cさんはそれら3棟のアパートの経理を任されていたそうです。
父親がアパートを3棟所有していたことなど知らなかったAさんは驚きます。
「アパート3棟!? そんな……いったいいくらの相続税がかかるんですか!? 相続税が何千万円なんてことになったら、私には払えませんよ」
さらにCさんは、Aさんに対して下記の助言を行いました。
- 相続したアパートの家賃収入は不動産所得となるため、今後は確定申告が必要となること
- 不動産や現預金、株式や投資信託などの金融商品だけでなく、掛け軸や骨とう品も相続財産として相続税の対象となること
- 小規模宅地等の特例(※1)といった相続税の軽減措置を利用するためにも、申告期限(※2)を厳守すること
※1.小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住用(実家)や事業用(アパート)に使用していた宅地を相続した場合に、一定の要件を満たすことで相続税評価額が減額される制度のこと。
※2.相続税の税務署への申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内