2024年秋の衆議院議員選挙において、「年収103万円の壁」の引き上げを掲げた国民民主党がZ世代から高い支持を集めました。しかし、同世代の投票率は約3割に留まり、前回の選挙を下回る結果に。この一見矛盾した現象は、「若者の政治離れ」として一括りにはできません。本稿では、牛窪恵氏の著書『Z世代の頭の中』(日本経済新聞出版)より、Z世代における政治意識のリアルについて、詳しく解説します。
玉木雄一郎代表のYouTubeに熱狂、でも投票率はパッとせず。Z世代の「政治との奇妙な距離感」の正体 (※写真はイメージです/PIXTA)

本気で政治家になりたい

1,600人の調査データから読み解く、Z世代の“本音”
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「衆院選(24年)のときは海外にいて、投票に行けなかった。でも僕、本気で政治家になりたいんです」と話すのは、グローバルメーカーに勤務する阪本弘輝さん(実名・以下ヒロキさん/29)。慶應義塾大学在学中に、「議員インターンシップ」に参加、国会議員の事務所で選挙活動の手伝いをした経験があります。

 

10歳のとき、父親が「ナゾの借金」を作って離婚、母と祖父母の家で育ちました。また中学校では、同級生によって、椅子から床に引きずり降ろされるなど暴力的ないじめに遭った、とのこと。さっそく、いじめのリーダー格(A男)を突き止めると、いじめを黙認する担任の先生と交渉し、「先生も(いじめを)大ごとにしたくないでしょう?」「それなら次のクラス分けで、僕とA男を必ず別のクラスにしてください」と迫ったといいます。

 

同時に、不当ないじめに遭わないためにも、一心不乱で勉強し知識を身につけ、「別の(高レベルな)ステージ」に行こうと決意。受験勉強と並行して、むさぼるように古典(文学・哲学)や偉人伝を読みあさりました。

 

「ケネディみたいに、言葉で世界の人々に影響を与えられるって、超カッケー(カッコいい)じゃないスか」。

 

高校以降、真剣に政治家の道を模索し始め、大学では複数の分野にまたがる「総合政策学」を専攻。また授業で出会ったゲストスピーカーに頼み込み、「将来、政策を練るときのために」と、介護施設で1年間ボランティア活動に勤しみました。身近な祖父母の悩みや日本の少子高齢化を鑑み、未来の課題解決へのヒントを「現場で知ろう」と考えたそうです。

 

就活では、最終段階まで進んだグローバルメーカーの面接で、新卒採用の責任者に対し、「いつか政治家になりたい!」「そのために、世界(海外)の中の日本を見たい!」と宣言。その甲斐あって、採用後は海外支局(タイ)に配属され、いまに至ります。

 

本来は卒業直後、議員秘書になろうとも考えたそうですが、議員インターンシップの経験から、「政策云々以前に、議員になるまでの資金集めや、人間関係の構築がめっちゃ大変」だと気づいたとのこと。ゆえに、しばらくは様子見だと、ヒロキさん。タイでアジア方面との取引に関わりながら、「古典エヴァンジェリスト」の名で始めた、YouTubeチャンネル(「阪本弘輝のロード・トゥ・カエサル」)を運営。「立候補の際に必要な資金を稼げるかもしれないから」と、コツコツと地道に配信を続けています。

 

※2 登場人物の年齢は取材当時のものです

 

 

牛窪 恵
世代・トレンド評論家