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「投票離れ=政治離れ」か
そんななか、発信された「あなたたち若者は損をしている」といった玉木氏によるメッセージは、Z世代に「ようやく自分の味方が現れた」と強く感じさせたのでしょう。玉木氏はその後、Z世代の親世代にもあたる「氷河期世代」の救済をも訴えました。
では、国民民主党に共感する若者が増えたことで、投票率は伸びたのでしょうか。
衆院選における20代の投票率(小選挙区)は、90年の段階では6割近く(57.8%)ありましたが、96年に4割を切り(36.4%)、以後一度も5割を超えず、毎回3、4割台で推移しています。そして24年はといえば、20代の投票率は3割強(34.6%)で、前回の衆院選時(21年/36.5%)を、むしろ下回る結果だったのです(総務省「選挙関連資料」)。
若い世代の間で、あれほど「年収103万円の壁」を巡る熱狂が見られたにもかかわらず、20代の6割超が、やっぱり投票行動に出ていない。こうした結果が、「日本の若者は結局、政治に無関心だ」と、上の世代を落胆させるのかもしれません。本音で言えば、私も「せめて5割以上の若者には、投票に行って欲しい」とも思います。ですが近年、投票行動に消極的なのは、若者や「日本人」だけでもないようなのです。
たとえば、40、50代における衆院選の投票率(小選挙区)。90年にはいずれも8割を超えていましたが、20代の投票率が急落した96年には両者とも7割前後まで下落。さらに24年にはいずれも5割台まで落ち込み、96~24年までの下げ幅は、20代より40、50代のほうが大きかったことが分かります(総務省公表値)。
また、米国の大統領選挙(含・中間選挙)における世代別投票率を見ても、00〜16年までに実施された9回の選挙で、21〜34歳の投票率がその上の世代を上回った年は、ただの一度もありません。16年の同年代の投票率も約5割と、日本を多少上回る程度です。
同じく「若低」の傾向は、英、仏、独など欧州においても見られます。北欧諸国のように、学校で実践的な「政治教育」を行なう国では、若年層の投票率が8割前後に達するケースもありますが、多くの国、とくに仏では18〜29歳における投票率(17年)が、なんと2割を割り込む(17.4%)ほど下がっているのです(20年文部科学省「諸外国における世代別投票率」)。仏の投票率は「有権者登録」をした人を元に算出しますが、若者は未登録割合が高いとされ、実際の投票率はさらに低いかもしれません。
もっとも、フランス政治を専門とする同志社大学政策学部の吉田徹教授は22年、朝日新聞の取材に対し、「投票率が低いことと政治無関心は、同義ではない」「フランスの若者は、(投票率が低くても)政治参加には積極的」だと答えています(同6月24日掲載)。
確かに、政治関連のデモに大挙して参加する仏の若者たちは、政治に無関心とは思えません。日本のZ世代も、SNS限定とはいえ、バーチャル空間では「こたつ記事」ならぬ「こたつ民主主義」とも言うべき盛り上がりを見せており、必ずしも政治に関心がないわけではないでしょう。また、「この国を変えたい」と思いつつも、「誰に投票すればいいか分からない」「だから投票に行かない」との声は、今回のインタビュー調査でも多く聞こえてきました。
もちろん、20代の6割以上が投票に行かない日本の現状は、決して褒められたことではありません。ただ、これほどデジタルが身近になり、ショッピングも仕事も学びも、様々なことが自宅からネット経由で、こたつに入りながら可能になった現代において、限られた期間に「わざわざ」リアルの場に投票に出向くのは、明らかに以前より「面倒」だと感じやすいはず。その傾向は、なにも若者や日本に限ったことではないのです。