マイホーム購入時に受けた、親からの援助。購入を後押ししてくれた親の優しさが、相続などをきっかけに、深刻な家族トラブルに発展するケースがあることをご存じですか? 実情をみていきましょう。
世帯年収770万円の30代夫婦、夫の突然死により「団信」で住宅ローン完済も…遺された妻と娘が「住む家を失った」ワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

やっと掴んだ幸せ

「この家から出ていきなさい」

 

千早さん(仮名)が、夫・順平さん(仮名)の母親からそう告げられたのは、夫の死からわずか1ヵ月後のことでした。

 

娘と再スタートを切ったシングルマザー

千早さんが順平さんと出会ったのは30代前半。前の夫からのDVが原因で離婚し、幼い娘を一人で育てるシングルマザーでした。千早さんの両親の協力は得られず、縁もゆかりもない土地で会社員として必死に働く日々のなか、同い年の順平さんと出会います。誰にでも優しく、とりわけ両親を大切にする彼の人柄に、千早さんは強く惹かれました。

 

二人が結婚を決めたとき、順平さんの父親からある提案を受けます。

 

「アパートの家賃を払い続けるくらいなら、家を建てたらどうだ。うちの敷地内に建てれば土地代もかからない」

 

順平さんの実家の土地を無償で貸し、そこに家を建てるというのです。順平さんは諸手を挙げて喜び、千早さんも一抹の不安はありましたが、娘と3人で暮らせる新築の家への期待が勝りました。順平の年収は450万円、千早さんの年収は320万円です。建物は家族3人にちょうどいい25坪、諸経費込みで2,200万円の住宅ローンを組みました。

 

1年後、マイホームが完成。順平さんの両親は千早さんの娘を本当の孫のように可愛がり、娘もすぐに「おじいちゃん、おばあちゃん」と懐きました。ようやく手に入れた穏やかで幸せな日々。しかし、その生活は長くは続きませんでした。

 

結婚から3年後、営業マンとして接待も多く、疲れをためていた順平さんが、職場で突然倒れます。脳卒中でした。あまりに早すぎる、突然の別れでした。