(※写真はイメージです/PIXTA)
新しい家族が…身勝手な言い分と、SNSで見た残酷な現実
少しずつ離婚の傷が癒えていった恵さん。自活できるようにと、派遣社員として働くようになりました。そんな娘を鈴木さん夫婦も全力でサポート。子ども(孫)の面倒を一手に引き受けました。そこには穏やかな老後の姿はなく、「二度目の子育てですよ」と笑顔の鈴木さん夫婦。
しかし、離婚から1年ほど経ったころ、養育費の振り込みがピタリと途絶えました。恵さんが連絡を取ると、元夫は悪びれもせずにこう言い放ったという。
「こっちにも新しい家族ができたんだ。もう昔のことには金は使えない。自分の力で何とかしてくれ」
払えないのではない。払う気がないのだ。その身勝手な言い分に、鈴木さん夫婦は言葉を失いました。
「どうやら、再婚した相手との間に子どもが生まれたみたいで……でも翔太らが子どもであることは変わらない。それなのに、あんまりですよ」
さらに不快なことが起こります。恵さんの友人が偶然、元夫のSNSアカウントを発見。そこには、新しく子どもが生まれたという報告とともに、都心の高級レストランでのディナー、真新しい高級外車、そして海外旅行――。ブランド品に身を包み、満面の笑みを浮かべる元夫の姿があったといいます。
「本当に信じられません。人間性を疑います」
娘と孫2人との5人暮らしは、静かだった老後の家計も容赦なく圧迫。増え続ける食費や光熱費、孫の学費。恵さんが仕事で稼ぐ月20万円強の収入と、鈴木さん夫婦の年金だけでは到底追いつかず……老後のためにと蓄えてきた貯蓄を切り崩すしかありません。
「このお金は、老後の安心のためのもの。できるだけ手を付けずにいようと思っていましたが、そうは言っていられなくなりました」
厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯で養育費を「現在も受けている」のはわずか28.1%。養育費の取り決めをしている世帯でも約半数(46.7%)のみが実際に養育費を受け取っています。養育費の不払いは、決して珍しい話ではありません。
「娘も孫も、何も悪くない。悪いのはすべて、父親としての責任を放棄し、自分たちの贅沢な暮らしを優先するあの男です」と正雄さんは吐き捨てるように言いました。
[参考資料]
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]令和5年』
厚生労働省『令和3年度全国ひとり親世帯等調査』