総務省統計局の調査によると、世帯主が65歳以上の2人以上の世帯で、貯蓄現在高が2,500万円以上の世帯は35.2%と、世帯全体の3分の1以上を占めています。「これほど潤沢な資産があれば老後は安泰なのだろう」と思いきや、思わぬ悩みを抱えている人もいるようです。66歳夫婦の事例をもとにみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
悔やんでいます…〈年金月34万円〉〈貯蓄8,000万円〉66歳の元エリートサラリーマン、「金欠です」と嘆く59歳元部下を“心の底から羨む”ワケ【CFPの助言】
貯蓄8,000万円…なに不自由ない生活を送る66歳夫婦
66歳のAさんは、現役時代大企業の部長を務め、65歳で定年退職した元エリートサラリーマンです。郊外にある戸建住宅に、同い年の妻Bさんと2人で暮らしています。
現在の収入は、夫婦の老齢厚生年金とAさんの企業年金をあわせて、月34万円ほどです。このほか、退職金を含めた約8,000万円の貯蓄があります。
夫婦ともに無駄遣いを嫌う性格で、現役時代からしっかり家計管理をしていたため、住宅ローンは60歳のときに完済しています。
若いころ転勤族だったAさんは、40歳のときに自宅を購入。住宅ローンの返済と2人の子どもの大学進学が重なったにもかかわらず、20年間で完済できたことを誇りに思っています。そんな子どもたちも、現在は36歳と34歳となり、すでにそれぞれ家庭を持っています。
8,000万円の貯蓄、月34万円の年金……。A夫婦の老後は、なんの心配もないはずでした。しかし――。
Aさんはある日を境に、「これまでの暮らしぶりを悔やんでいます」とうなだれるように。いったいなにがあったのでしょうか。
きっかけは部下に誘われて参加したゴルフ
1ヵ月ほど前、Aさんが現役時代の部下Cさん(59歳)から誘われ、ゴルフに行ったときのことです。
「自宅まで迎えに行きますよ」と言われ、Aさんが準備を済ませて外に出てみると、そこにはピカピカの高級車が停まっています。
「お待たせしました! 荷物はここに入れてください」
トランクを開けると、すでに積んであるCさんのゴルフクラブは自分が持っているものよりハイブランドで、しかも最新モデルのようです。
「ずいぶんと羽振りがいいみたいだな」
Aさんが思わず嫌味も込めてつぶやくと、Cさんは爽やかな笑顔で言いました。
「いやいや、我慢できないだけですよ。私も妻も、欲しいものができたらすぐにお金を貯めて、貯まったらすぐに買うんです。おかげでいつも金欠ですよ」