55歳から準備を始め、難関資格を取得。退職後は独立開業し「人生最後のチャレンジ」に踏み出しました。しかし結果は想定外。かけた時間とお金に見合う収入は得られず、老後資金を減らす事態に――。本稿では、FPの三原由紀氏が資格に頼るセカンドキャリアの落とし穴について解説します。
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人生最後のチャレンジ、儚くも散る…〈退職金2,500万円〉〈貯金1,500万円〉〈年金見込額月21万円〉55歳会社員、難関資格合格→独立で「食っていける」はずが、わずか3年で「老後資金700万円消失」に意気消沈【FPの助言】
老後を前にしたチャレンジで「失敗しない」ための3つの鉄則
高橋さんのように、老後を前に「人生最後のチャレンジ」に踏み出そうと考える人もいるでしょう。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただし、セカンドキャリアで失敗を避けるためには、押さえておくべきポイントがあります。
鉄則1:撤退ラインを事前に決める
「2年間で黒字化しなければ撤退」「老後資金の10%以上は使わない」といったルールを決めておくことが重要です。
鉄則2:副業から始めるリスクヘッジ
継続雇用で安定収入を確保しつつ、週末起業から始める。老後を目前に、いきなり安定収入を捨てるのは危険すぎます。
鉄則3:家族と機会損失を正確に把握する
配偶者の同意と理解は不可欠です。継続雇用を選ばないことの機会損失(高橋さんの場合約1,800万円)を夫婦で共有し、それと同等以上の収益見通しがあるかを冷静に判断する必要があります。
現在の日本では65歳までの継続雇用が義務化されています。安易に確実な収入源を手放すのではなく、副業から始めて独立可能性を見極める慎重さも求められます。
高橋さんは現在、「細く長く」続けられる範囲で活動を継続しています。
「挑戦する気持ちは大切です。でも、もっと慎重に、段階的に進めるべきでした」
60歳以降の人生は長く続きます。無理のない範囲でチャレンジしながら安心できる老後を築く──そのバランスこそが、真の「人生100年時代」の生き方なのかもしれません。
三原 由紀
プレ定年専門FP®