55歳から準備を始め、難関資格を取得。退職後は独立開業し「人生最後のチャレンジ」に踏み出しました。しかし結果は想定外。かけた時間とお金に見合う収入は得られず、老後資金を減らす事態に――。本稿では、FPの三原由紀氏が資格に頼るセカンドキャリアの落とし穴について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
人生最後のチャレンジ、儚くも散る…〈退職金2,500万円〉〈貯金1,500万円〉〈年金見込額月21万円〉55歳会社員、難関資格合格→独立で「食っていける」はずが、わずか3年で「老後資金700万円消失」に意気消沈【FPの助言】
資格を取っても「食えない」現実
念願の診断士になった高橋さん。しかし、そこにはさまざまな「想定外」が待ち構えていました。開業準備だけで予想外の出費が発生。実務補習15万円、業務用のパソコン一式15万円。さらに年間95万円もの固定費が重くのしかかりました。
【年間固定費(概算)】
・中小企業診断士協会年会費:5万円
・各種研修費:15万円
・ビジネスコミュニティ年会費:20万円
・バーチャルオフィス賃料:45万円
・会計ソフト・HP維持費等:10万円
・中小企業診断士協会年会費:5万円
・各種研修費:15万円
・ビジネスコミュニティ年会費:20万円
・バーチャルオフィス賃料:45万円
・会計ソフト・HP維持費等:10万円
妻にこの費用を伝えると、妻は愕然としました。
「こんなにお金がかかるなんて聞いてない。サラリーマンの時は会社がすべて負担してくれていたのね」
また、開業しても売上は伸びず、開業初年度の年収は60万円、2年目は80万円、3年目は100万円。
「資格があれば重宝されると思っていましたが、実際は安い報酬の仕事しか回ってこない。特にITやデジタルに強い若手診断士は企業から重宝される一方で、私のような営業畑出身はなかなか力を発揮できませんでした」
収入から固定費を差し引くと、手元に残るのは年間わずか5~35万円。時給換算すると数百円程度にしかならないこともありました。妻の美恵子さんのパート勤務の給料は毎月8万円ほどで、夫の「事業収益」をむしろ上回ることもありました。
「私のパートの方がよっぽど稼げるわ」
そう言われ、返す言葉もありません。継続雇用なら年収350~400万円×5年間で1,750~2,000万円を得られたはず。その分、厚生年金の受給額も増えていたことになりますから、その機会損失は計り知れませんでした。