資格を取っても「食えない」現実

念願の診断士になった高橋さん。しかし、そこにはさまざまな「想定外」が待ち構えていました。開業準備だけで予想外の出費が発生。実務補習15万円、業務用のパソコン一式15万円。さらに年間95万円もの固定費が重くのしかかりました。

【年間固定費(概算)】
・中小企業診断士協会年会費:5万円 
・各種研修費:15万円
・ビジネスコミュニティ年会費:20万円
・バーチャルオフィス賃料:45万円
・会計ソフト・HP維持費等:10万円

妻にこの費用を伝えると、妻は愕然としました。

「こんなにお金がかかるなんて聞いてない。サラリーマンの時は会社がすべて負担してくれていたのね」

また、開業しても売上は伸びず、開業初年度の年収は60万円、2年目は80万円、3年目は100万円。

「資格があれば重宝されると思っていましたが、実際は安い報酬の仕事しか回ってこない。特にITやデジタルに強い若手診断士は企業から重宝される一方で、私のような営業畑出身はなかなか力を発揮できませんでした」

収入から固定費を差し引くと、手元に残るのは年間わずか5~35万円。時給換算すると数百円程度にしかならないこともありました。妻の美恵子さんのパート勤務の給料は毎月8万円ほどで、夫の「事業収益」をむしろ上回ることもありました。

「私のパートの方がよっぽど稼げるわ」

そう言われ、返す言葉もありません。継続雇用なら年収350~400万円×5年間で1,750~2,000万円を得られたはず。その分、厚生年金の受給額も増えていたことになりますから、その機会損失は計り知れませんでした。