相談者の悩みに真摯に向き合い、老後まで見据えたマネープランを作成し助言を行うなど、お金の面で人生の伴走者となってくれる税理士やファイナンシャルプランナー。これらの“お金の専門家”は、いったいどのような資産運用を行っているのか、気になるところです。そこで今回は、現役税理士でCFPの宮路幸人さんが自身の「資産運用を始めた理由」と運用状況について解説します。
子ども時代の“トラウマ”から「投資」を避けていた税理士・CFPが「資産運用」をはじめた理由 (※画像はイメージです/PIXTA)

「投資=ギャンブル」…お金の専門家が株式投資を“拒んでいた”ワケ

 

私は税理士・CFPの資格を活かして”お金の専門家”として仕事をしています。しかし、とある理由から、つい最近まで積極的に投資をしたことはありませんでした。幼少期、父がギャンブルにハマり、家族が大変な目にあったことがあります。この経験から、少しでも“ギャンブル要素”があるものに対して、過剰に拒否反応を示していました。

 

株式投資をはじめとした資産運用についても、頭では「投資=ギャンブルではない」と理解していても、「とにかく損をしたくない」「運の要素がこわい」と、子ども時代のトラウマから自ら手を出すことはありませんでした。

 

そんな思いはありつつも、20年ほど前、仕事の勉強もかねて株式投資に挑戦したことがあります。しかし、どの銘柄を選べば良いかわからず思いつくまま購入した結果、投資した株がすぐに値下がりし、損切りしました。

 

やっぱり自分には向いていない…それ以来、さらに株式投資に対する印象が悪化してしまいました。

 

また、税金関係の勉強にもなるからと、不動産投資を検討した時期もありました。しかし、まとまった資金もなく、当時の自分には不動産投資のリスクを許容できる余裕もなかったことから、結局踏み出すことができませんでした。

 

そのため、私の主な資産形成方法は銀行での定期預金だけでした。ほとんど金利がつかない時代でしたが、“株式投資=ギャンブル”という印象が拭えなかった筆者は「元本が保証されているだけいいかな」という感覚でした。

 

しかし、いま冷静に考えるとそうともいえません。というのも、物価上昇率が預金金利を上回ると「お金の価値」は目減りしてしまうからです。

 

「物価上昇率1%」「預金金利0.1%」の場合を考えてみましょう。この場合、現在10,000円の商品の価格は、1年後10,100円に値上がりします。一方、銀行に預けた10,000円は1年後10,010円にしかなりません。

“最初の1歩”を踏み出したきっかけは…

 

このように、資産運用の経験がほとんどない筆者でしたが、FPとして日々お金に関するさまざまな相談を受けていると、2024年のNISA大改正が話題になって以降、資産形成について質問をいただく機会が急増しました。

 

業務上必要な知識は当然網羅しました。また、FPとして資産運用の有用性は理解しているつもりです。とはいえ、投資経験が乏しいのは事実。「自分が経験していないことを知識だけで語っていいのか、このままでは説得力のあるアドバイスができないのではないか…」と考えるようになりました。

 

そうして、新NISAが始まる1年前の2023年、メディアで盛んに「NISA」のCMが流れるようになったころ、筆者も遅ればせながらNISAを始めてみました。