老親が出資して二世帯住宅を購入する家庭は少なくありません。 「孫の近くで暮らしたい」「老後は家族に囲まれて過ごしたい」という思いは、親世代に共通する理想でしょう。しかし、現実には同居ゆえのストレスや価値観の違いが家庭内トラブルに発展し、後戻りのできない後悔を抱える人もいるのです。今回は、老後資金を投じて夢の二世帯住宅を手に入れた68歳男性が、2年後に味わった苦悩とその教訓をファイナンシャルプランナーの小川洋平氏がお届けします。
同居なんてするんじゃなかった…老後資金を切り崩し〈総額7,000万円の二世帯住宅〉を購入した68歳元会社員。「孫と暮らせる」「老後も安心」と歓喜も、わずか5年で「もう限界」大後悔のワケ【CFPの助言】
老後資金を投入して「人生最大の買い物」…後悔しないためには?
同居はうまくいけば心強いものですが、ひとたび歯車が狂えば関係の修復は困難になってしまいます。特に二世帯住宅のような構造の家は、売却しづらい・分離しにくい・相続トラブルを招きやすいという特性があり、柔軟な対応が難しい点に注意が必要です。
今回のケースのような場合では、購入から十数年で孫が進学や就職で家を離れる可能性が高く、義男さん夫婦も介護や施設入居の局面を迎えたり、亡くなったりといったことも想定されます。その場合、残された娘夫婦にとっては、二世帯住宅のリフォーム費用や修繕費、光熱費などが大きな負担になることが予想されます。
もし今後二世帯住宅を検討するなら、敷地内に2棟を建てる「分棟型」にすることで、生活空間を分けつつ互いを尊重できる距離感を保てます。ライフステージの変化にも柔軟に対応でき、売却や相続もしやすくなります。
家は人生で最大の買い物です。特に親が老後資金を差し出して家族のために家を建てる場合には、数十年先のライフステージや関係性の変化まで想定した設計が不可欠です。
家族にとって最適な住まいの形を考えよう
今回は、二世帯住宅を建てたものの、同居生活の中で生活スタイルや価値観の違いが表面化し、家族関係に溝が生じてしまった義男さん夫婦の事例を紹介しました。
このように、離れて暮らしているときにはうまくいっていても、同居をきっかけに不仲になるケースは少なくありません。大きなお金を投じたあとでは取り返しがつかなくなることもあります。もし「同居というスタイルが合うか確認してみたい」という場合には、戸建ての賃貸を利用して“お試し同居”をするという選択肢もあります。
将来のライフステージや無理のない資金計画を見据えながら、家族にとって最適な住まいの形を考えていきましょう。
小川 洋平
FP相談ねっと