仕事も家庭も忙しく、実家には年に数回帰るだけ。電話越しの母の声はいつも元気で、特に心配はしていなかった金子さん(仮名・57歳)。しかし、久しぶりの帰省で目にしたのは、実家の変わり果てた姿と母親の変化。突然、財産管理や介護への備えが急務に……。今回は、親が元気なうちにしかできない準備とはなにか、CFP(ファイナンシャル・プランナー)の伊藤寛子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
なんか変だ…1年ぶりに帰省した息子、戦慄。年金月15万円・独居暮らしの83歳母「元気いっぱい」のはずが、実家の玄関を開けた途端に感じた「強烈な違和感」の正体【CFPの助言】
親が元気なうちにすべき「3つの準備」
今回の金子さんのケースは、決して特別なことではありません。親が一人暮らしをしているご家庭であれば、同じようなことがいつ起きても不思議ではないのです。
手遅れにならないためには、親が元気なうちに、親子で将来について話し合い、情報を共有しておくことがなによりも大切です。具体的には、以下の3つの準備を始めましょう。
・資産と契約の棚卸し
通帳・証券・保険・不動産の権利証など親が持つ財産の一覧を作る。不要な口座は解約し、資金を使いやすくまとめておく。
・将来の財産管理
判断能力が低下したときに備え、任意後見契約、家族信託などの制度の利用や遺言書を検討し、「誰が」「どの範囲で」管理するかを決めておく。
・介護への備え
介護が必要になった際に、どこで、どのような支援を受けたいか、費用はどうするか、など親の意向を聞き、家族の考えとすり合わせておく。
こうした備えは、親の生活の安心を守るだけでなく、離れて暮らす家族の心と生活も守ります。自分の親に限ってまだ大丈夫だろう……と、老後のお金や暮らしの話は後回しにしがちです。しかし、その先送りが後々の負担を何倍にもします。
「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気なうちに整える」ことが、親子にとって最良のリスク対策になるでしょう。
伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)