一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの平均客単価は725.5円。多くの人にとって日常的な金額ですが、定年退職後のシニア層にとっては、この小さな金額の積み重ねが老後資金を脅かすことも。しかし問題の本質は、単なる金銭的な浪費だけではないかもしれません。65歳男性が“コンビニ依存”に陥った事例から、その背景にある根深い問題をみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
また来るよ…「年金月16万円」「貯金700万円」老後が不安な65歳男性、妻から注意されても〈コンビニ依存〉から抜け出せない深刻な理由【CFPの助言】
話し合いの結果…
仮に月25万円の支出で生活をするには、3年後に年金の受給額が月約7万円増えるまでBさんがパートを続けて、さらに支出を削減するか収入を増やす必要があります。
するとBさんから「パート先から、勤務時間を増やして厚生年金に加入するように勧められたけどメリットはあるのか」と聞かれたため、筆者は「厚生年金に加入すると、Bさんが65歳から受給する老齢厚生年金の受給額は、現在の見込額より増えます。ただし、手取りの給与がいくら増えるか、また健康保険と厚生年金の保険料は、いくら給与天引きされるか、事前に会社に確認しておいたほうが良いでしょう」と答えました。
Bさんは「今日聞いた話を参考に、老後の過ごし方を考えます」と、Aさんは「家計のことは妻に任せっきりだったので……もう少し真剣に考えます」と言って、その日は帰って行きました。
Aさんがみつけた“新たな生きがい”
しばらくして、Aさんから筆者に連絡がありました。
Bさんは厚生年金に加入して、手取り給与が今より2万円弱上がりましたが、これからも家計の財布は締めていくそうです。
またAさんは、近所の公立病院で外来患者をアシストをするボランティアを見つけたとのこと。愛妻弁当を持って、週3回その病院に通っているそうです。
さらに、地元の祭りに孫たちを連れて行ったとき自治会長と話をする機会があり、会長から勧められて自治会の手伝いを始めたといます。同時期に老人クラブにも入会したそうで、楽しそうに「忙しくなって大変だ」と話してくれました。
そして、習慣化していた新聞や週刊誌はできる限り図書館で読むようになり、コンビニでの買い物はBさんが旅行などで不在のときと決めたそうです。
コンビニに行く回数はめっきり減っても、店員とは変わらずたわいもない話をして、「また来るよ」と言って帰ると笑っていました。
老後の生活は、原則すべて自由時間です。事前になにをするか決めておかないと、思いついたままに、貴重な老後の生活資金に手を付けてしまう可能性があります。
そうならないためにも、現役時代から老後の暮らしを準備しておくことが、退職後の貴重な資金を有効に使うための鉄則といえるでしょう。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員