一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によると、コンビニの平均客単価は725.5円。多くの人にとって日常的な金額ですが、定年退職後のシニア層にとっては、この小さな金額の積み重ねが老後資金を脅かすことも。しかし問題の本質は、単なる金銭的な浪費だけではないかもしれません。65歳男性が“コンビニ依存”に陥った事例から、その背景にある根深い問題をみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
また来るよ…「年金月16万円」「貯金700万円」老後が不安な65歳男性、妻から注意されても〈コンビニ依存〉から抜け出せない深刻な理由【CFPの助言】
Aさんが“コンビニ依存”になったワケ
そんなAさんは、退職後も規則正しい生活をしなくてはと、毎朝約1時間の散歩を始めることに。するといつの間にか、散歩の最後に近くのコンビニに寄る習慣ができていました。
当初はコンビニの店内の品物を眺めるだけでしたが、試しにとスポーツ新聞を買いました。すると、時間を持てあます日中の退屈を紛らわせるのに丁度よいと感じたAさんは、それ以来新聞を毎日2社ずつ、週刊誌も週に2~3冊買うようになったのです。
また、昼食は現役中も退職後もBさんが作っていました。しかし、Aさんはコンビニで弁当やおにぎり、総菜なども買うようになります。その結果、毎週6,000円~7,000円の出費です。
Bさんが「コンビニで買う物はもう少し考えて」と注意しても、Aさんは「まあまあ、大した額じゃないんだから」と、取り付く島もありません。
そんな日々が続き、明らかに残高の減りが早くなった通帳をみて危機感を抱いたBさんは、Aさんを連れて知り合いのFPに相談することにしたのでした。
コンビニ通いを止められないAさんの危険性
Bさんから事情を聴いた筆者は、Bさんが管理していた夫婦の家計収支を見せてもらいました。収入は夫婦で月23万円と、Aさんが勤めていたころの3分の1に減っています。支出は、Aさんがコンビニや日中自宅で使う電気代などで、以前より増えています。
Aさんは「あのコンビニは自分と同世代や外国の従業員がいて、話しかければ気軽に話に乗ってきてくれるから、ついつい『また来るよ』という調子で頻繁に足を運んでしまって……定年後の生きがいみたいなもんです」と言います。
Bさんはすかさず「エアコンを使って電気代が高くなるのはともかく、新聞や週刊誌は図書館に行って読めばいいし、お昼は私が作っておくので、わざわざコンビニで買わなくてもいいでしょう。なんとかしてよ!」と、夫婦ともに真剣です。
筆者がA家の支出を試算してみると、コンビニの支払い以外で、現在加入中の保険料やサブスクなどの無駄な契約を削減しても、支出は月約25万円。毎月約2万円の赤字です。
700万円ある貯蓄は、将来夫婦の介護や看護の費用や自宅の修繕費に残しておき、手を付けないほうがよいと考えました。