「今月も3万円足りない…」通帳を見つめる手が震える神宮寺夫妻。月15万円の年金で2人暮らしのアパート生活は、物価高騰の波に完全に飲み込まれていました。3年前まで「なんとかやっていける」と思っていた家計は、今や毎月貯金を切り崩さなければ生活できない状況に。お米を買うのも躊躇し、電気代を気にして真夏でもエアコンを我慢する日々。「昔と同じ感覚」では到底暮らしていけない現実に直面した老夫婦の切実な体験から、私たちが今すぐ考えなければならない老後の資産防衛策をFPの青山創星氏が探ります。
(※写真はイメージです/PIXTA)
お米はもはや高級品です…〈年金月15万円〉〈貯金1,000万円〉家賃7万円のアパートで慎ましく60代年金夫婦。「今月も3万円足りない」みるみる減る貯金に忍び寄る「老後破産の影」【FPの助言】
老後に入っていても諦めない!今からできる資産防衛策
「もう手遅れかも……」そう嘆く神宮寺夫妻に、FPの永瀬さんは「確かに選択肢は限られますが、まだできることはあります」と励まします。
まず重要なのは、残された資産をインフレから守ることです。 神宮寺夫妻には約1,000万円の預貯金がありました。このうち一部を「物価上昇に対応できる金融商品」に移すことを提案しました。
投資は怖いという恵子さんに対し、永瀬さんはこう続けます。
「すべてを動かす必要はありません。生活費の2〜3年分は現金で確保し、そのうえで余裕資金の一部を“物価上昇に強い商品”に回す。これなら安心感を保ちながら資産を守れます。具体的には、個人向け変動10年国債やバランス型の投資信託といった、リスクを抑えた金融商品です」
それでも、「元本保証じゃないのは不安」という英明さん。
「現金・預貯金は安全だと思われがちですが、物価上昇で実質的な価値は下がり続けます。何もしないでいると、物価上昇で着実に実質的な元本額が減っていくと考えるとわかりやすいと思います。少しでも資産の一部を動かすことで、守れる部分があるんです」
あわせて永瀬さんが強調したのは、支出と収入のバランスです。固定費の見直し、公的サービスの活用に加え、健康が許せばシルバー人材センターでの短時間勤務も選択肢に。
「できればもう働かず、節約で何とかしたいと思っていた」と話す英明さんに、「今は70~74歳でも3人に1人が働いている時代です。収入を補うだけでなく、生活の張り合いや健康維持にもつながりますよ」と説明しました。
神宮寺夫妻はこれらのアドバイスを聞き、この先資産をどう守っていくか、改めて老後のプランを考え直しているといいます。