日本でお金持ちが多い場所と聞くと、東京や大阪、横浜や神戸など、大都市をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、日本にはあまり知られていない“お金持ちの村・町”が数多く存在します。鹿児島県の奄美大島西部に位置する宇検村(うけんそん)もそのひとつです。では、この村の住民はなぜお金持ちなのか、経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が住民の声を交えて解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
役場職員「レクサスやクラウンはよく見ますね」…人口1,600人・平均年齢55歳「平均給与859万円」奄美大島・宇検村の秘密【日本に実在する“お金持ちの田舎”の実態】
「宇検モデル」が示唆する地方創生のヒント
宇検村の事例は、地方創生のヒントに満ちている。
地域資産の集中と活用
宇検村は「海」という唯一無二の資産に集中投資し、ブランド力と販路を磨き上げることで差別化に成功した。これは、他の地域にも応用可能だ。たとえば、農業であれば特定の作物を高付加価値化し、販売網を組織化することで同様のモデルを構築できる。
ニッチ戦略の有効性
「量ではなく、付加価値で勝つ」という発想は、中小規模の地域や企業にこそ適している。宇検村が狙ったのは、マス市場ではなく“高級食材”という限定的だが高単価な市場。これは、地域経済のスケールに合った現実的な戦略だ。
外部知見の取り込み
宇検村の強みは、漁協・大学・商社の「三位一体」の協力体制にある。地域だけでは補えない技術や販売力を外部と組むことで、持続可能な事業基盤を作り上げている。この「オープンな地域経営」の発想は、他の産業にも転用可能だ。
宇検モデルは、漁業だけでなく農業・観光業でも展開できる。たとえば山間部の農産物でも、同じく「ブランド×販路×組織化」を徹底すれば、全国に競争力を持つ地域ビジネスが育つ可能性がある。
宇検村の事例は、地域の“見えない資産”をどうビジネスに変えるか、その実践例といえるだろう。
鈴木 健二郎
株式会社テックコンシリエ 代表取締役
知財ビジネスプロデューサー