老後を公的年金だけで生きるのは難しく、蓄えがなくて生活苦に陥る高齢者は少なくありません。特に一人暮らしの高齢女性のなかには、子どもの手助けや公的支援を受けずに孤立している人もおり、放置すれば孤独死などにつながる可能性もあります。今回は、子どもに迷惑をかけたくない一心で生活苦を隠していた75歳の女性と、その実態を知ってしまった50歳の息子の事例とその解決策を、CFPの松田聡子氏が解説します。
節約のためエアコンもつけず…年金月9万円・独居暮らしの75歳母、熱中症で救急搬送。「元気だから大丈夫」の影で困窮も、「子どもにも生活保護にも頼りたくない」と零す理由【CFPの助言】
セルフネグレクトを避けるためにできることは?
知っておきたいセーフティネットの活用法
きよ子さんが生活苦を克服し、啓一さんが安心できるようにする方法について、FPからアドバイスいたします。
きよ子さんの「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちは、子どもを思う親としての切実な感情といえるでしょう。しかし、その結果、無理をして熱中症で倒れたり、最悪の事態になったりすれば、啓一さんは精神的な苦痛だけでなく、さまざまな金銭的・物理的な負担を背負うことになります。
本当に子どもに迷惑をかけたくないなら、まずは公的な支援を活用しましょう。支援を受けることはきよ子さんの生活を安定させるだけでなく、啓一さんの精神的な負担の軽減にもつながります。
以下は、きよ子さん親子にしてほしい、具体的な行動です。
1.地域包括支援センターに相談する
まずは、きよ子さんの住む地域の地域包括支援センターに連絡しましょう。地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしを総合的に支えるための地域の拠点です。保健師や社会福祉士といった専門家が、きよ子さんのような高齢者のさまざまな悩みや困りごとについて、無料で相談に乗ってくれます。
啓一さんが相談員にきよ子さんの状況を伝えれば、適切なサービスや制度を紹介してもらえるはずです。自治体によっては、安否確認のための見守りサービスや栄養バランスの取れた食事を届けてくれる配食サービスなどを実施しているところもあります。
家賃の負担が大きい場合、公営住宅への転居も選択肢となるでしょう。
2.福祉事務所で生活保護の相談
生活保護については、地域の福祉事務所で受け付けています。申請する際、扶養義務者(このケースでは啓一さん)に経済的な支援が可能かどうかを問い合わせる扶養照会が行われます。しかし、啓一さんのように家計が苦しく支援が難しい場合は、その旨を伝えれば扶養が困難と判断されるでしょう。
きよ子さんの問題を啓一さんがひとりで抱え込む必要はありません。専門家や公的な支援を上手に活用し、親子で協力しながら解決への道を切り開いていくことが、これからの安心な暮らしにつながります。
松田聡子
CFP®