「銀行員なら老後は安泰でしょう」——そんな周囲の羨望の声に包まれながら、田中夫妻(仮名)は退職しました。退職金2,000万円と企業年金で「これで安心」と思っていたのも束の間、退職から3年が経った現在、毎月多額の赤字に苦しんでいます。なぜ、誰もが羨む「安定職業」だった銀行員家庭が、こんなにも早く老後破産の危機に陥ってしまったのでしょうか。銀行員という職業の意外な制約と退職後に直面する現実から、あらゆる職業の人が学ぶべき教訓についてFPの青山創星氏が詳しく説明します。
お金のプロのはずなのに…最高年収1,000万を誇った元銀行員〈退職金2,000万円・年金月28万円〉で「勝ち組老後」と思いきや…月13万円の大赤字に転落→「あと6年後に破綻」のジリ貧に悲鳴【FPの助言】
すべての人に共通する「老後破産回避」のための8つの教訓
田中夫妻の経験から学ぶべき教訓は、あらゆる職業・年齢の人に当てはまります。
【8つの教訓】
1.「安定職業神話」を過信しない
どんな職業でも、現代の老後には十分な備えが必要
2.退職後の固定費を事前に正確に把握する
税金や健康保険料などの社会保険料、家の維持管理費等々も勘案する
3.企業年金・退職金制度の実態を早めに把握する
制度変更で想定額が大幅に下がるケースが多発している
4.自分のリスク許容度を正確に把握する
年齢、健康状態、投資経験に応じた適切な戦略を選択する
5.認知機能低下を見据えた資産管理体制を構築する
75歳以降は複雑な投資を避け、シンプルな資産管理に移行する
6.生活水準の段階的引き下げを計画する
プライドより実益を重視し、計画的な支出見直しを実行する
7.複数の収入源確保と健康維持を両立する
働き続けることで収入と健康を同時に維持する
8.早期からの専門家相談も検討する
50代から定期的にFPなどの専門への相談も検討し、状況変化に応じて戦略を調整する
一人ひとりに最適な老後設計を
田中夫妻の事例は、決して他人事ではありません。現代日本では、どんな職業であっても「老後は安泰」と言えるケースは少なくなっています。しかし、重要なのは「一律の解決策はない」ということです。たとえば、資産運用一つとっても、下記の通り、タイプによって適切な方法は変わります。
・積極的な投資が可能な人:リスクを取って資産を増やす
・戦略安全性を重視する人:国債・定期預金中心の保守的運用
・認知機能低下が心配な人:シンプルで理解しやすい資産管理
田中さんのように投資に前向きで健康な65歳と、投資に不安を感じる70歳、さらに認知機能の低下が心配な80歳では、取るべき戦略は全く異なります。
だからこそ、早い時期からの老後対策が重要です。自分で考えるのには自信がないという方は、50代からFPなどに相談し、自分の状況変化に応じて戦略を調整していくことも安心につながる一つの方法です。銀行員に限らず自分の老後に真剣に向き合い、自分に最適な計画的準備が必要です。田中さん夫妻のように、危機に気づいたときが変化のチャンスです。
あなたの老後計画は、本当にあなたの状況に合った安心できるものになっていますか?職業や勤務先の「安定感」に安住せず、一人ひとりの状況に応じた最適な老後の安心を築く——それが現代を生きる私たちに求められているのです。早めの行動が、安心できる老後生活への第一歩となるでしょう。
ファイナンシャルプランナー
青山創星