「2,000万円の退職金があるから大丈夫」という甘い見込み

正雄さんは退職金2,000万円を受け取ったとき「退職金と企業年金とこれまでの蓄えがあれば老後は安心」と思いました。しかし、現実は厳しいものでした。

まず、退職金で住宅ローン残債1,200万円を一括返済。退職所得税・住民税なども引かれ、手元に残ったのは約750万円でした。

さらに、退職後にも国民健康保険料、介護保険料、所得税、住民税、固定資産税、自動車税等の固定費が重くのしかかります。

「現役時代は給与天引きで意識していなかった費用が、退職後は直接家計を圧迫しました。特に国民健康保険料の高さには驚きました」と美香さんは深刻な表情を見せます。

結局、下記のように支出が収入を大きく上回り、月13万円の赤字家計に転落してしまったのです。

【退職直後の月次収支】
・収入:夫婦の国民年金・厚生年金+企業年金=28万円

・支出:生活費+税金・社会保険料他=41万円

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収支:月13万円の赤字

さらに追い打ちをかけたのは、予想外の出費でした。正雄さんの白内障手術、美香さんの膝の治療、築25年の自宅の外壁塗装、車の買い替え……。

こうして、毎月の赤字補填のために退職金残高750万円と蓄えを取り崩し続けた結果、3年間で500万円が消えていました。残る資産は1,000万円弱。このままいけば、6年余りで底をついてしまいます。