自らの老後資金を犠牲にしてまで教育投資をしてきた子どもが社会人になり、ひと安心していた矢先、「本当にやりたいことを見つけた」「もう一度大学受験をしたい」という、まさかの告白が。教育資金は、必ずしも親にとって“報われる投資”とはならないことも……。本記事では、子どもに対する親の役割・支援のあり方について、FPの三原由紀氏が解説します。
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冗談だろ…教育費2,000万円を投じた〈自慢の息子〉が三つ指ついて告げた「とんでもない決意」。安定コンサル退職・医学部再受験宣言・実家リターン懇願に、世帯年収850万円・50代夫婦、絶句【FPの助言】
「教育は将来の投資」というけれど…“報われる”とは限らない現実
子どもの教育資金は、「将来のための最良の投資」——多くの親がそう考えることでしょう。
文部科学省の調査によると、私立大学(文系)4年間の平均費用は約410万円、理系なら約542万円。大学院進学や留学を含めれば1,000万円を超えることも珍しくありません。これに私立中高や塾代を加えると、斎藤さんのように2,000万円をかけるケースも、決して特殊ではないのです。
しかし現実には、今回のように就職後すぐの離職やキャリア転換が起きることがあります。厚生労働省の調査 では、新規大学卒就職者の約34.9%が就職後3年以内に離職。そのなかには、斎藤さんの息子のように「本当にやりたいことを見つけた」というケースも含まれています。
つまり、教育への投資は必ずしも親の思い描いたリターンを生むとは限りません。むしろ再進学や生活支援の負担が再びのしかかることもあるのです。
妻はこう振り返ります。
「息子が順調に働いてくれると信じて教育費をかけました。まさかこんな展開になるとは……気持ちの整理がつきませんでした」
現代は働き方やキャリアの選択肢が多様化し、やり直しが可能な時代です。一方で、親世代の経済的・心理的負担は確実に大きくなっています。