年収900万円、子どもの教育費も終わったのに、なんでお金が貯まらないのか……。妻の口癖「お金がない」を信じ、趣味や付き合いも我慢してきた会社員の原田さん(仮名・54歳)。家計のフタをあけたところ、家計を圧迫していた原因として浮かび上がったのは、高額な保険料でした。本当にこれほどの保険が必要なのか? 明らかになった保険の内訳と見直しのポイントについて、CFP(ファイナンシャル・プランナー)の伊藤寛子氏が解説します。
何で生活が楽にならないんだよ…「年収900万円」「年金見込額28万円」の54歳会社員、妻の「お金がない」を信じて倹約生活を続けるも、疑念噴出。通帳の引き落とし「月10万円」まさかの支出に唖然【CFPの助言】
不安でかけすぎた保険、本当に必要?
原田さん夫妻は、自分たちだけではどの保険が必要で、どれが不要なのか判断がつきません。そこで、知人の紹介でファイナンシャルプランナー(FP)に相談することにしました。
「すでにお子さんが独立しているので、2,000万円以上もの死亡保障を持つ必要性は低いでしょう。ご主人に万が一のことがあった場合に、残される奥様のために必要な保険は、遺族年金、死亡退職金、貯蓄などで足りない分をカバーできる程度で十分です。お葬式代は貯蓄でまかなえるようであれば、あえて保険で備える必要はありません」
さらに、こう続けます。
「また、日本の医療制度には『高額療養費制度』があります。収入に応じてひと月の医療費の自己負担額には上限が設けられていることから、民間の医療保険ですべてカバーする必要はありません。差額ベッド代や食事代など、公的医療保険制度の対象外となる費用や、貯蓄でカバーしきれない場合に対して備えるのが合理的です」
老後資金についてもアドバイスがありました。
「老後資金準備が主な目的であれば、保険で運用するよりも、iDeCoやNISAの方が効率的です。現在加入中の個人年金保険を解約してNISAなどの運用に回す選択肢もありますが、加入年数に応じて解約控除が差し引かれます。解約による元本割れを避けたい場合には、解約はせずに今後の保険料の支払いをストップする『払い済み』という方法もあります」
保険の見直しで、月7万円の保険料削減に成功
FPと相談のうえ、原田さん夫妻は「いまの自分たちに本当に必要な保障はなにか」という視点で、次のように保険を見直しました。
【見直し後の保険内容】
(夫)
・終身保険+定期保険 →解約し、必要保障額に合わせた終身保険に切り替え:月13,000円
・医療保険 →保障内容を見直して切り替え:月8,000円
・がん保険 →解約し、医療保険にがん保障を追加
・変額個人年金保険 →払い済みに変更(これ以上の保険料支払いはストップ)
(妻)
・終身保険 →解約
・医療保険 →保障内容を見直しして切り替え:月7,000円
・がん保険 →解約し、医療保険にがん保障を追加
・変額個人年金保険 →払い済みに変更
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー見直し後の夫婦の保険料合計:月28,000円
結果、月約7万円、年間約84万円もの保険料の削減に成功しました。
保険を見直したことで、原田さん夫妻の家計には目に見えるゆとりが生まれました。削減できた保険料のうち、月5万円は老後資金のためにiDeCoとNISAで積み立てることに。
「同じお金の話でも、将来のための前向きな話ができるのは楽しいですね」と原田さん。そして残りの浮いたお金は「夫婦で楽しむための予算」に。
「以前の妻の口癖は『安いほうにしよう』『我慢しよう』ばかりだったけど、最近は外食を楽しんだり、『たまには旅行でも行こうか』って誘ってくれたりするようになったんです」と、うれしそうに話していました。