親会社が推薦する、ピーク年収2,000万円の元大企業部長

ある日、親会社の部長から「1人、採用してほしい人がいるんだよね。60代なんだけど……」と連絡を受けたAさん。シルバー人材は居酒屋のハードワークに不慣れで、すぐに辞めてしまうことから慎重になっていたAさんでしたが、「1度会ってやってくれないか」と懇願されます。

そこで渋々履歴書の顔写真をみてみると、なんとそこには、Aさんと顔見知りのBさんが写っていました。

Bさんは、誰もがその名を知る大企業の部長を務めていた人物です。親会社の部長によれば、「いまは定年退職しているが、ピーク時の年収は2,000万円あった」といいます。

会社の接待で何度かAさんの店を利用しており、その際も肩書きで威張ることなく、気さくな話し好きで親しみを覚えていました。

「いくら大企業の部長さんだったとはいえ、面接してから採用するかどうか判断することになりますが……。それでも大丈夫ですか?」

恐る恐るそう尋ねたAさんですが、「それでもいい」と親会社の部長はいいます。「早速面接してほしい」と、翌日Bさんと面接することになりました。

実際に会ってみると、Bさんはお客さんとして店に来たときの印象のまま、元部長だからと驕ることもなく、誠意を感じる態度です。そこでAさんは、Bさんを社員として即採用することにしました。

「さ、採用です……!」

問題なく働いているようにみえたが…

社員教育に力を入れていたAさんは、Bさんに対しほかの社員と同じように基本ルールを指導し、自分自身も忖度なしに教育するよう努めました。当初はBさんもその教育を受け入れ、特に問題なく接客しているようにみえていました。

「どうなることか不安だったけど、採用してよかったな」

そういって、ホッと胸をなでおろすAさん。ところが……。

ある日、社員Cから、「最近の元部長の接客態度は目に余るものがある」とタレコミが入りました。たしかにこのところ常連客から、「できれば元部長(なぜかあだ名として浸透)のいない日に予約を入れたい」と数件問い合わせが入っています。

普段は会計業務で忙しくしているAさんですが、このまま放置するわけにはいかないと判断。Aさんは翌日、ホールでBさんの接客を観察してみることにしました。