好きな場所で働き、気の向くままに住まいを変える――。そんな「旅するように暮らす」自由な生き方が、かつてないほど現実的な選択肢となっています。そのスタイルは、現役世代だけでなく、リタイア後のシニアの選択肢としても驚くほど多彩です。しかし、その自由な生き方には、シニア世代が直面する「家を借りにくい」といった現実的な課題も。本記事では、ふくしまゆきお氏の著書『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』(ごきげんビジネス出版)より、定年後の新しいスタイルでの旅について解説します。
だからお金持ちの持ち物なのか…「キャンピングカー」のシニア旅が増えたが、「1回数千円」ばかにならない予想外の出費
短期賃貸マンションやアパートなどに滞在する旅
旅行期間が長くなると仕事の時間が入ってくることもあります。旅行費用を稼ぐ人もいますし、井上氏のように暮らし自体が旅になっている人もいるでしょう。
旅先で仕事をする、というとIT関係のノマドワーカーのイメージが強いですが、山登りが好きで引っ越しを繰り返している看護師さんなどIT以外の仕事も多いのです。農繁期に農家に住み込んで果物の収穫などをしている人、北海道で夏の漁期に漁師小屋に住み込んでアルバイトをしている人、宿の季節労働の人、など自宅を離れて仕事をしている人もいます。稼いだあとは旅をしてから家に戻るパターンが多いようです。「おてつたび」という人材紹介サイトでは、日本各地の農家や旅館などの短期の求人が紹介されているので参考になりますよ。
滞在する物件は、アパート、借家、雇い主の家、などさまざまです。シェアハウスや短期賃貸マンションも選択肢です。住宅のサブスクもあり、旅するように住居を変えられます。私たちの選択肢は多彩なのです。ただし、シニア世代になるとアパートなどでは部屋を貸してもらえない、という問題に直面します。
63歳で部屋を探した私も悲しい思いをしました。次は老人ホームの部屋を借りようと思っています。家具付きで、1週間でも、1年でも借りられる部屋があるのです。
シニア世代になった私は、通過する旅よりも滞在する旅がよい、と考え実践しています。通過する旅はガイドブックに記載されている景観と味の確認になってしまいがちなので、物足らないのです。オンラインの日本語教師は続け、昔の人たちの楽しみの調査もしています。人の役にたつ仕事をしたうえで遊ぶ、旅する、といった昔の人たちのスタイルの踏襲です(教師の仕事は週2日だけですが…… )。毎日どこかへ出かけるだけの生活は、私にはつらいのです。
移動手段はゆっくりで、見知らぬ土地では高速道路を使うよりも旧街道を通るようにしています。高速道路は山を切り開いた道かトンネルなので個性がありません。その点、旧街道はそれぞれの土地の個性をもっています。できるだけ利用し、ガソリン代の2倍以上かかる高速道路代は宿泊費にまわしています。地域の博物館や資料館に寄って昔の人たちの楽しみを調査するのもパターンのひとつです。
普通列車を利用している人もいます。神奈川県に住み、長野県のクラインガルテン(コテージ付き貸し農園)との2拠点居住をしている方は、7時間かけて移動しています。その旅が楽しいそうで、列車の時間は寝るための時間ではないようです。江戸・明治時代のお金はかけず時間をかけて楽しむスタイルの踏襲ですね。
ふくしま ゆきお
昔の楽しみ研究家
※本記事は『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。