2019年に「老後2,000万円問題」が話題になったこともあり、老後に向けた準備に励んでいる人は多いでしょう。しかし、たとえ金銭面で万全の備えができたとしても、“意外な悩み”に直面するケースも少なくありません。そこで今回、安泰の老後が確定しているにもかかわらず「後悔している」と漏らす66歳の女性の事例から、豊かな老後を送るための秘訣をみていきましょう。牧野寿和CFPが解説します。
後悔しています…「年金月16万円」「貯金5,000万円」「住宅ローン完済」安泰の老後を手に入れた66歳女性の“誰にも共感されない”悩み【CFPの助言】
内閣府の調査からみえる「シニアの不安」の実態
内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、60歳以上の男女の経済面での不安は
■収入や貯蓄が少ないこと:47.1%
■自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること:43.1%
■災害により被害を受けること:41.5%
■自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること:36.6%
■認知機能の低下等により、財産の適正な管理ができなくなること:25.4%
となっています。
さらに、「老後のために必要だと思う備え」の回答は
■終活関係の準備(自身の葬儀やお墓の準備、財産等の整理・相続の準備):36.3%
■防災・防犯に関する備え(住宅の防災対策、防災用品の備蓄、防犯システムの利用等):18.0%
■住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕等):18.0%
■資産形成(貯蓄・投資)など:17.8%
■地域・職場等で人とのつながりを持つこと:14.5%
■財産管理に関する備え(認知機能の低下等に伴う、財産管理の相談(金銭管理サービスの利用等)):10.4%
とあるように、老後の備えについて悩んでいる人が多いようです。
4,000万円の具体的な使い道
Aさんから相談を受けた筆者は、Aさんの家計支出を見せてもらいました。家計の見直しの対象となりやすい保険料などを含めて、無駄な支出はありません。
そこで「介護や看護などに残しておく金額は、Aさんが考えている1,000万円で十分です。問題は残りの4,000万円を、いかに思い通りに使っていくかです」と話しました。
その使い方の例として、何歳の時に、何にお金を使いたいのか、金額は問わず項目だけ書き出してみることを勧めました。Aさんは「面白そう」とメモ用紙に書き始めます。
1ヵ月間程度の湯治や海外の行きたかった地名、家具や食器、和服など買いたかった品物を、どんどん書き出していきます。ある程度書出したところで、予算も書き加えてみました。Aさんは本当に行きたかったり買いたかったものだったのでしょう。ほとんどの値段を知っていました。
金額を合計すると約500万円です。「この8倍も使えるんですね。よし、真剣に私のお金の使い方を考えます。また見てくださいね」とほっとした表情で、その日は帰って行かれました。