内閣府の調査からみえる「シニアの不安」の実態

内閣府「令和7年版高齢社会白書」によると、60歳以上の男女の経済面での不安は

■物価が上昇すること:74.5%

■収入や貯蓄が少ないこと:47.1%

■自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること:43.1%

■災害により被害を受けること:41.5%

■自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること:36.6%

■認知機能の低下等により、財産の適正な管理ができなくなること:25.4%

となっています。

さらに、「老後のために必要だと思う備え」の回答は

■健康に関する備え(健康の維持・増進、介護予防、保険、病気やけがの治療等):75.1%

■終活関係の準備(自身の葬儀やお墓の準備、財産等の整理・相続の準備):36.3%

■防災・防犯に関する備え(住宅の防災対策、防災用品の備蓄、防犯システムの利用等):18.0%

■住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕等):18.0%

■資産形成(貯蓄・投資)など:17.8%

■地域・職場等で人とのつながりを持つこと:14.5%

■財産管理に関する備え(認知機能の低下等に伴う、財産管理の相談(金銭管理サービスの利用等)):10.4%

とあるように、老後の備えについて悩んでいる人が多いようです。

4,000万円の具体的な使い道

Aさんから相談を受けた筆者は、Aさんの家計支出を見せてもらいました。家計の見直しの対象となりやすい保険料などを含めて、無駄な支出はありません。

そこで「介護や看護などに残しておく金額は、Aさんが考えている1,000万円で十分です。問題は残りの4,000万円を、いかに思い通りに使っていくかです」と話しました。

その使い方の例として、何歳の時に、何にお金を使いたいのか、金額は問わず項目だけ書き出してみることを勧めました。Aさんは「面白そう」とメモ用紙に書き始めます。

1ヵ月間程度の湯治や海外の行きたかった地名、家具や食器、和服など買いたかった品物を、どんどん書き出していきます。ある程度書出したところで、予算も書き加えてみました。Aさんは本当に行きたかったり買いたかったものだったのでしょう。ほとんどの値段を知っていました。

金額を合計すると約500万円です。「この8倍も使えるんですね。よし、真剣に私のお金の使い方を考えます。また見てくださいね」とほっとした表情で、その日は帰って行かれました。