Aさんの「その後」

2ヵ月ほど経ってから、Aさんは100歳までに、4,000万円を旅行などに計画的に使う行動計画を作成して筆者のところを再び訪れました。試しに温泉や海外旅行にひとりで行ったことで、病みつきになったそうです。

まず80歳までは、海外旅行と、その疲れを癒やす湯治をセットにして、約2ヵ月周期で繰り返すという旅行スケジュールを立てました。これに加え、欲しかった調度品の購入費として2,000万円の予算を確保しています。

続く80代は、行動範囲が狭まることを見越し、国内旅行を中心に1,000万円を計上。そして90歳以降は「体調次第」で柔軟に使い道を考え、100歳で貯蓄をすべて使い切る計画です。

計画の変更は予算の範囲内で行い、毎年の誕生日には計画全体を見直すというルールも決めました。

万が一のための終身サポート事業

さらにAさんは、ひとりでの生活が難しくなったときに備え、お金の管理や身の回りの世話を「高齢者等終身サポート事業」を営む事務所と契約したいと考えています。

この事業は、日常生活で支援が必要な高齢者や障がい者へ向けて、身元保証、死後事務、日常生活支援などの終身サポートを提供するものです。事業者が遵守すべき指針は、2024年6月に、内閣官房・内閣府・金融庁・消費者庁・総務省・法務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省が連名で「高齢者終身サポートガイドライン」として発表しています。

Aさんはこのサポート事業者と契約することで、安心して老後が暮らせると、そのための費用も100歳までの支出計画に含めています。

なお、事業者ごとにサービス内容や費用の異なるところがあり、また契約時にまとまった金額と毎月の費用が終身必要です。慎重に事業者を精査して契約することが大切です。

「貯める」から「使う」への意識改革を

筆者はAさんの「お金の価値は使うときにわかるんですね」という言葉が印象に残っています。Aさんのお金の使い方は誰もができる訳ではなく、またその使い方を他人が評価する必要もありません。

人それぞれ、お金の貯め方や使い方があります。ただ、何に使うか決めてお金を貯めたほうが、貯まったお金をスムーズに使うことができるでしょう。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員