年々厳しさを増す夏の猛暑。いまや最高気温が40℃以上となる「酷暑」も珍しくありません。都市部の暑さを引き起こす原因が都市部外にまで影響を与えたり、降雪エリアでも40℃近い猛暑日が観測されたりと、日本の夏は厳しさを増す一方です。今回は『47都道府県の怖い地理大全』(彩図社)より一部を抜粋し、日本を襲う猛暑の正体をみていきましょう。
雪国を襲う“猛暑”?
猛暑が恒常化している昨今では、北国である北陸地方も高温からは逃げられない。2024年9月10日には、太平洋高気圧の記録的な北上により、新潟県の新津が9月では全国1位の37.2度を記録。福井県坂井市三国も36.8度で、その日の全国3位だった。同時期には新潟県長岡市、十日町市、石川県加賀市などでも記録的な高温を記録し、北陸地方は歴史的な猛暑に見舞われた。
高気温を記録した一因として、フェーン現象の発生が挙げられる。フェーン現象とは、暖かく湿った空気が山を越え、山麓に吹き降りることで局地的な気温上昇を起こす現象だ。そのメカニズムは、以下のとおりである。
温暖な空気が山を登ると、100メートルにつき約1度、空気の温度が下がっていく。湿った空気の場合、気温の下降比率は半分になる。空気中の水蒸気が凍って周囲に熱を放出するため、気温低下が緩やかになるのだ。
この空気が雲をつくって雨を降らすと、空気から水分が失われて乾燥していく。乾燥した空気はやがて山を降りていくが、今度は100メートルごとに1度、温度が上がっていく。元の気温低下が緩やかだったので、上昇前より暖かくなるわけだ。この結果、空気が下降した山麓エリアに、異常な高温がもたらされる。
実は、北陸地方はフェーン現象が特に起こりやすい。北アルプス山脈などの広大な南方の山地に太平洋側の南風がぶつかり、より高温になるからだ。
2018年には富山県で統計開始以降当時最高の39.5度を記録した。2023年8月10日には、台風6号の影響で吹き込んだ風がフェーン現象を起こし、新潟県三条市で37.9度、石川県小松市で39.1度と体温超えの熱さとなっている。
今後は、地球温暖化によって海面の水蒸気量が上昇することで、暖かく湿った空気がいっそう増えるともいわれる。北陸地方を襲う猛暑も、より厳しくなるかもしれない。
地形ミステリー研究会
オフィステイクオー
