50代後半の「給与ゼロ」は、想像以上に重い【FPの助言】

ファイナンシャルプランナーとして、50代で早期退職を考える人に必ず伝えるのは、「退職後のキャッシュフローは、人生で最も不安定になる」という事実です。

中高年の転職は厳しく、50代後半(男性)の「転職入職率(常用労働者数に対する転職者の割合)」を他の年代と比べると、やや低い傾向があります。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」を見ると、年齢階級別の転職入職率は「55~59歳」の男性一般職で5.7%、パートタイム労働者20.2%より低くなっています。また、転職後に年収が減少した割合は34.3%、3人に1人といった具合です。

仕事が決まらず給与がないということは、「支出は自分で賄うしかない」ということ。そしてそれは、"自分の生活"だけでなく、"親や子の予期せぬ支援"も含めた全体の負担がのしかかります。

特に、介護は突然やってくることが多く、「要介護認定されたらすぐ施設へ」というわけにもいきません。さらに、介護は思った以上に費用や手間がかかるため、家計への影響も大きくなりがちです。特に施設入所となると、まとまった資金の準備が求められるケースもあります。

ここで、退職前に必ず行ってほしい3つの準備があります。

①生活費の見直しと「援助可能額」の試算
自分の生活費+万が一の家族支援を含めて「毎月いくらまで出せるか」を明確にしておく。

②再就職の想定条件とスキル棚卸し
中高年の再就職では、たとえ再就職支援サービスがあっても、希望通りの条件を得るのが難しいケースも少なくありません。実際の求人とのギャップに戸惑う人も多いため、自分の“労働市場価値”を知っておくことが、退職後の選択肢を広げる第一歩になります。転職エージェントに相談し、現実的な年収レンジを事前に把握しておくことが重要です。

③家族との情報共有と緊急時プラン
介護や医療の事態は「突然」起きます。兄弟姉妹との分担や親の資産状況、介護方針などを早めに話し合いましょう。特に、親の預貯金額、年金受給額、保険加入状況を家族で共有しておくことで、いざという時の判断がスムーズになります。

「仕事からの解放」が「人生の自由」とは限りません。"収入がないこと"が、いざという時に「動けないリスク」になることもあるのです。

自分の人生を見直すタイミングでもある50代。だからこそ、「支える力を残したうえでの選択」を。その判断こそが、未来の自分と家族を守る"本当の自由"に繋がるのではないでしょうか。

三原 由紀
プレ定年専門FP®