毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」について、受給見込額以外はしっかり確認していないという人もいるのではないでしょうか。そんな人は要注意です。山﨑裕佳子CFPによると、「ねんきん定期便」には年金受給見込額と同じかそれ以上に注意深くチェックしておきたい項目があるといいます。定年間近の隆司さん(仮名・59歳)の事例をもとに「ねんきん定期便」の注意点を見ていきましょう。
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隆司さんの年金額はいくら増える?
仮に隆司さんの2年間の年金記録が認められた場合、年金額はいくら増えるのでしょうか。
平成15年3月以前に厚生年金に加入していた場合の厚生年金報酬比例部分の金額は、次の式で計算することができます。
■厚生年金報酬比例部分の計算式(~平成15年3月まで)
平均標準報酬額×7.125/1,000×加入月数
隆司さんの記憶によると、当時の月収は16万円ほどだったそう。その場合、次のように計算できます。
一方、国民年金の1年分の未納分については、納付期限から2年を過ぎているため追納はできません。ただし、老齢基礎年金が満額に満たない人は60歳以降に任意で国民年金に加入すれば、基礎年金を満額に近づけることは可能です。
隆司さんの「その後」
同僚とかつての後輩、そしてFPの協力のもと、隆司さんは年金記録の訂正請求を行いました。
その結果、隆司さんの認識どおり「ねんきん定期便」に記載された年金加入記録に不備があったことが判明。本来は厚生年金に加入しなければならない働き方だったにもかかわらず、最初の2年間は会社が厚生年金保険に加入させていなかったことがわかりました。
加えて、国民年金の任意加入についてはFPと相談のうえ、払う保険料と増える年金額を天秤にかけた結果、見送ることにしました。
したがって、65歳以降受け取る年金額は、ねんきん定期便に記載されていた額のままということになります。
代わりにFPからは、できるだけ長く働くことを提案され、隆司さんも前向きに検討しています。たとえば、65歳まで月収20万円で厚生年金に加入して働けば、年金額は年間6.5万円増やすことができます。
■厚生年金報酬比例部分の計算式(平成15(2003)年4月以降)
20万円×5.481/1,000×60月=6万5,772円/年
十分とはいえない金額かもしれませんが、長く働くことで勤労収入を得られれば資産の目減り速度を緩めることができるでしょう。
ねんきん定期便は必ず“隅々まで”確認を
50歳以降の人のねんきん定期便には、将来の年金受給見込額が記載されています。特に59歳の誕生月に送付される「ねんきん定期便」には詳しい加入記録が掲載されていますので、自分の記録や記憶と相違がないか必ず確認しましょう。
働いていたのに厚生年金保険の加入記録がない、厚生年金保険に加入した日が就職日より後になっている、社会保険料を徴収されていたにもかかわらず加入記録がないなど、ねんきん定期便の記載内容に疑問がある場合には、可能な限り素早く年金事務所に問い合わせましょう。調査の結果、誤りや漏れが認められれば年金加入記録が回復します。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士/CFP認定者
