えっ、うそだろ?…同僚が口にした“まさかの事実”

それから半年ほど経ったある日、隆司さんは同僚との雑談のなかで年金について話していました。すると同僚は、「ねんきん定期便」について衝撃の事実を口にします。

「こないだ俺にも『ねんきん定期便』が届いたんだけどさ。中身を確認したら、年金の加入記録が間違っていたんだよ。あれには驚いた

「えっ、うそだろ? 本当にそんなことあるのか?」

「そうなんだよ。『訂正請求』とかけっこう面倒でさ、いやあ、参ったよ。お前も年金をもらい始める前にちゃんと確認しておいたほうがいいぞ」

隆司さんは、半年前乱暴にしまったままの「ねんきん定期便」を思い出し、帰宅後再び「ねんきん定期便」の封筒を引っ張り出すことにしました。

すると、封筒のなかにこれまでの詳しい年金加入履歴が同封されていることに気がつきます。

おいおい…ねんきん定期便の「誤り」を発見

長いあいだ同じ会社に勤めている隆司さんですが、過去に1度だけ転職経験があります。

最初の就職先は大学在学中にアルバイトをしていた飲食店に、店長に誘われるまま就職。3年ほど在籍し、26歳のときに退職しました。その後、アルバイトを転々としながら転職先を探すこと1年、27歳のときに現在の会社に就職したのです。

年金加入記録をよく見ると、勤め先ごとに年金に加入した年月日、資格を失った年月日の記載がありました。隆司さんが自分の過去の記憶を年金の加入記録と突き合わせてみると、最初に就職した飲食店の年金記録が2年分ありません。また、転職活動中の1年間のアルバイト期間は国民年金が未納となっていました。

「おいおい、俺も間違ってるよ……だから思っていたより年金額が少ないのか? すぐに封筒の中身を確認すればよかった……」

「訂正請求」には“証拠”が必要

さて、どうしたものかと思案する隆司さん。早速年金事務所に向かいました。

年金記録が事実と異なる場合は、年金記録の訂正請求を国に行うことができます。年金の訂正請求は厚生労働省に対して行いますが、窓口は近くの年金事務所です。なお、請求に費用はかかりません。

手続きには、年金記録訂正請求書や同意書などの提出が求められますが、当時の勤務状況を証明できる資料(たとえば年金手帳や、給与明細書、預金通帳など)が必要になります。

隆司さんの場合、飲食店で働いた3年間のうち2年間の厚生年金記録がないようです。しかし、飲食店はすでに倒産しており、隆司さんには当時を証明できるものがありません。

困った隆司さんは、知り合いのファイナンシャルプランナーに相談。すると、提出できる資料がなにもない場合でも、周辺事情から訂正請求ができるケースがあることがわかりました。たとえば、事業主、同僚など当時の勤務状況や給与などを証言ができる人がいれば、訂正が認められる場合があるということです。

隆司さんは、当時一緒に働いていた後輩に連絡をしてみることに。後輩は数十年ぶりの連絡に驚いていましたが、事情を話すと「第三者証明」に協力してくれることになりました。