夫婦ともに平和な老後を送っていたが、1本の電話で一変

高橋良夫さん(仮名・67歳)は、地方の中堅企業を定年退職し、長年連れ添った妻の冴子さん(仮名・68歳)と二人で静かな老後を送っていました。

年金は夫婦で月22万円、退職金などを運用しながら築いた資産は2,500万円。特に派手な暮らしぶりでもなく、旅行や外食を楽しみながら、特段の不安も無い老後の生活を送っていました。

ところが、弟の啓さん(仮名・58歳)からの1本の電話が、そんな平和な暮らしを一変させます。

「最近ずっと頭が痛くて……立ち上がるのもつらい。医者には行ってるけど、原因はよくわからず、働けなくて。どうにもならないんだ」

啓さんは若い頃から仕事が長続きせず、独身のまま、ずっと非正規雇用で生活してきました。住まいもアパートを転々とし、預貯金もなし。いわゆる“その日暮らし”のような生活をしていた彼にとって、病気は生活の破綻を意味しました。

こんな日が来るのを、心のどこかでずっと恐れていた高橋さん。しかし、家族である以上、助けずに突き放すことはできません。高橋さんは冴子さんに相談し、迷いながらも弟を同居させることを決意します。