もしもの時に備える、家計の見直しポイントとは

このように、50代の転職は決して簡単ではなく、たとえ再就職できたとしても、以前と同水準の収入を維持できるとは限りません。特に年収1,000万円を超える層では、その高収入が、転職市場ではネックになりやすく、選択肢が限られる可能性があります。こうした環境の中、ファイナンシャルプランナーの視点から3つポイントを解説していきます。

① 固定費の見直しと支出の可変化
まず取り組みたいのが、家計の固定費を見直し、いざという時に支出を抑えられる状態にしておくことです。高収入の方ほど、住宅ローンや家賃、車の維持費、保険料といった固定的な支出が多くなりやすく、一度その水準に慣れてしまうと、簡単には生活レベルを下げることができません。万が一、収入が急減した場合、これらをすぐに見直せないままでは、家計の立て直しが難しくなってしまいます。

また、教育費も大きな見直しのポイントの一つです。私立から公立への転校、習い事や塾の数の調整、また留学など大きな支出の再考も、状況に応じた判断として重要になります。家庭で早目に話し合い、柔軟な選択肢をもっておくことが大切です。

定期的に支出の状況を把握し点検することも重要です。家計簿アプリを活用すれば、支出を項目ごとに見える化でき、自分の家計のクセや無理のある部分にも気付きやすくなります。年に一度でも“家計の点検日”を設け、夫婦で支出と生活家設計を共有することは、家計の柔軟性を高める有効な習慣です。

② 生活防衛資金の確保
次に意識しておきたいのが、収入が減った時にすぐに使える「生活防衛資金」の確保と資産全体の構成を見直しておくことです。

資産をしっかり持っているつもりでも、それがすぐに生活費として使える状態にあるとは限りません。たとえば、投資信託や不動産などの資産は、現金化に時間がかかったり、市況によっては評価額が下がっていたりする可能性があります。

こうした状況に備え、会社員であれば、3~6ヵ月分の生活費を、普通預金や定期預金などの流動性の高い資産で確保しておくことが望ましいです。生活防衛費を準備しておくことで、収入が途絶えた際でも慌てず生活を維持することができます。

③ キャリアとライフスタイルの縮小戦略
最後に大切なのが、キャリアとライフスタイルの縮小も選択肢として視野に入れておくことです。50代以降は、会社の役職定年や事業再編、あるいは思わぬ健康問題などによって、働き方の見直しを迫られる場面が出てくることがあります。そんな時に、「収入を下げてでも働く」「仕事の内容を変える」といった柔軟な選択ができるかどうかが、その後の生活を左右します。

年収を維持し続けることにこだわり過ぎると、転職のチャンスを逃したり、無収入期間が長引いたりしてしまうことにもつながります。そのためにも収入の減少も想定した人生設計をもっておくことが重要です。

また、セカンドキャリアの備えとして、副業や資格取得、社外活動への参加など、小さな種まきをしておくことも効果的です。会社以外の人間関係を広げておくことは、精神的な支えにもなり、いざという時の仕事探しにも役立ちます。

さらに、暮らしそのものを見直す意識も必要です。今の生活レベルが「絶対」ではないことを家族と共有し、収入に応じて生活を調整できる価値観を持つことで、精神的にも経済的にも余裕が生まれます。

このように、①~③のポイントを日ごろから意識しておくことで、予期せぬ変化にも対応できる強い家計を築くことができます。