内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、60歳以上の男女が生きがいを感じる瞬間として最も多くあがっているのが「子供や孫など家族との団らん(55.3%)」でした。もっとも、なかには“子に怯える親”もいるようで……。子が成人を迎えた後の親子関係の難しさについて、とある家族の事例からみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
〈年金月34万円〉〈貯金3,000万円〉共働きだった70歳「年金パワーカップル」の後悔…溺愛していた43歳娘の帰省に“ビクビク怯える”ワケ【CFPの助言】
子・孫への資金援助、みんなどうしてる?
子どもが親から贈与を受ける典型的な例として、「住宅購入資金」があります。一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、新築住宅購入者が親から贈与を受けた場合の贈与額は、下記のように推移しています。
〈新築住宅購入者に対する親からの贈与額〉
・2022年度:998.2万円
・2023年度:915.8万円
・2024年度:776.3万円
上記のように年々減っている一方、同調査で既存(中古)住宅購入者が親から贈与を受けた場合の贈与額をみると、下記のように年々増額傾向にあることがわかります。
〈既存(中古)住宅購入者に対する親からの贈与額〉
・2022年度:662.2万円
・2023年度:734.4万円
・2024年度:752.9万円
Cさん一家は現在、新築の戸建て住宅に住んでいます。この住宅を購入した10年前、夫は父親から800万円の資金援助を受けました。
Cさんも父のAさんに援助を頼もうとしましたが、夫がこれを拒否。Aさんは、娘たちに援助できなかった負い目があるといいます。
また、ソニー生命保険株式会社「シニア※の生活意識調査2024」によると、この1年間孫のために使った「シニアの“孫消費”」の内容は下記のとおりです。
※ 本調査における「シニア」とは、50~79歳のことを指す。
1位「おこづかい・お年玉・お祝い金」……65.6%
2位「一緒に外食」……52.9%
3位「おもちゃ・ゲーム」……38.0%
4位「一緒に旅行・レジャー」……32.2%
5位「衣類などファッション用品」……30.4%
使った平均年額は10万4,717円と、2023年10万8,134円より3,417円減少しています。ここにも、物価高の影響があるのでしょうか。
老後破産の心配はないが…FPの見解
筆者のところを訪れたA夫婦は、自分たちの家計を心配するとともに、次のように言いました。
Aさん「Cが子どものころ夫婦ともに忙しく、旅行に連れて行けなかったことに自責の念があります。娘の期待を裏切りたくなく、できることなら旅行を続けたいのですが」
筆者が夫婦の家計収支を試算すると、退職後から10年の間に多額の支出があったものの、大部分が大規模修繕や車の買い替えなど一時的な支出であり、今後そのような予定はなさそうです。
また、現在70歳のA夫婦には、月34万円の年金収入と約3,000万円の貯蓄があります。そのため、今後の介護・看護費用やマンションの維持管理費の上昇を見込んでも、夫婦が100歳時点で1,000万円以上の貯金が残る計算です。
むしろA夫婦は、いまある貯蓄をどう有効に使うか考えるべきで、旅費にあてるのはそのひとつの方法でしょう。
Cさんたちとの旅行でお金の不安をなくすためには、旅行ごとに小遣いや旅先の食事代など一切合切の予算を決め、その金額を娘さんに事前に伝えたうえで出発すると安心です。
ここまで話すと、夫婦は「娘と旅行が続けられる」と言って、喜んで帰宅していきました。