内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、60歳以上の男女が生きがいを感じる瞬間として最も多くあがっているのが「子供や孫など家族との団らん(55.3%)」でした。もっとも、なかには“子に怯える親”もいるようで……。子が成人を迎えた後の親子関係の難しさについて、とある家族の事例からみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
〈年金月34万円〉〈貯金3,000万円〉共働きだった70歳「年金パワーカップル」の後悔…溺愛していた43歳娘の帰省に“ビクビク怯える”ワケ【CFPの助言】
夫婦水入らずの旅行のはずが…
娘の尽力に感謝したAさんは、なにか恩返しがしたいとCさんに伝えます。
「次はパパたちが費用を出すから、お前たち家族も一緒にどうだ」
父の誘いを喜んだCさんは、夫と当時保育園児の息子を連れて「3世代旅行」に出かけるようになりました。
しかし……。
3世代旅行が通例になるにつれ、徐々にCさんの振る舞いが変わっていきます。
「せっかくだから」と予定にない高級レストランで食事をとったり、ブランド品をおねだりするようになったのです。これにより、100万円近く予算オーバーになることも多く、A夫婦はどうしたものか悩んでいました。
そんな折、時は2020年。新型コロナウイルスが流行したことから、この旅行も中止を余儀なくされ、夫婦の悩みもいったん落ち着いたかのようにみえました。
「質素に暮らしたい夫婦」と「旅行再開に燃える娘」
旅行費用に加え、マンションの大規模修繕や部屋のリノベーション費用、車の買い替えなど、退職後に予定していたまとまった支出もあったことから、夫婦が定年退職してから10年経ち、現在の貯蓄は5,000万円から約3,000万円に減っています。
計画的な支出が多かったとはいえ、昨今の物価高からか、貯蓄の減り方が以前より早くなったと感じた夫婦は、「今後はもう少し質素に過ごしたい」と考えるようになりました。
「旅行再開もまだ先かな」
そんな風に考えていた夫婦ですが、Cさんは反対に、そわそわするようになりました。
「コロナ禍も落ち着いたことだし、そろそろ旅行も再開しない? 次はどこ行く?」「私たちの家族も行けるのよね?」
娘は、誕生日が近くなると毎回帰省をして、おねだりをするようになりました。
夫婦は、そんな娘の“おねだり帰省”の恐怖に怯えるように。
「このままではいずれ破産してしまうかもしれない……。今後どれくらいのペースで自分たちや娘家族にお金を使えるのだろうか?」と不安が大きくなった2人は、知り合いである筆者のもとを訪れました。