“常勤医師がいない”診療所…「新たなクリニック開業」の実態【医療コンサルタントが解説】

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“常勤医師がいない”診療所…「新たなクリニック開業」の実態【医療コンサルタントが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

クリニック開業といえば、開業を志す1人の医師がすべてを担うイメージを抱く人は多いでしょう。しかし医療業界を取り巻く環境の変化や、業界内の競争激化を背景に「新しいスタイル」で開業するクリニックが増えています。そこで今回、株式会社船井総合研究所の伊佐常紀氏が、近年注目されている2つの新たな開業スタイルを紹介します。

共同開業、M&A…多様化するクリニック開業のカタチ

「クリニック開業」と聞くと、1人の医師がすべてを担い、地域に根ざした医療を提供する姿が思い浮かぶかもしれません。

 

しかし、診療報酬の厳格化高齢化社会の進展地域医療構想など、医療を取り巻く環境は大きく変化し、それにともないクリニックの開業スタイルも多様化しています

 

■従来の開業スタイルのメリット・デメリット

従来の開業スタイルは、医師が独立して自分の理想とする医療を提供できるという大きな魅力があります。一方、開業準備や日々の経営に関する負担が大きいという側面も持ち合わせていました。

 

メリット・デメリットをまとめると、下記のとおりです。

 

【メリット】

理想とする医療を提供できる

・経営の自由度が高い

・利益率の高い経営が実現できる

 

【デメリット】

・開業準備に時間と労力がかかる

・初期投資や運転資金の負担が大きい

経営に関する知識やスキルが必要

 

こうした医師個人による開業特定の診療科に特化した地域密着型の開業スタイルが悪いわけでは決してありません。しかし近年では、複数医師による共同開業や医療法人の事業承継・M&Aなど、新たな開業スタイルが登場しています。これらは、従来のスタイルが抱える課題を解決する可能性を秘めているかもしれません。

 

今回は、そのなかでも特に注目すべき2つの方法に焦点を当て、従来の開業スタイルと比較しながら、それぞれの特徴やメリット・デメリット、そしてどのような医師に向いているのかについて解説していきます。

常勤医がいない?…経営は「外部にお任せ」で開業

新たな開業スタイルとしてまず紹介したいのは、本人は大型・中型病院での勤務医を続けながら開業し、医局から医師を派遣してクリニックを経営する方法です。1人の医師が常駐するのではなく、非常勤の医師で診療を行います

 

この方法の大きなメリットは「医師の負担軽減」です。従来の開業スタイルで負担となる開業準備や経営に関する業務を外部に委託することで、医師は診療に専念することができます。

 

また、近年は属人的な経営からの脱却も経営課題となっています。そのため、医師1名体制から複数体制にすることでリスクを分散することも可能です。

 

医局との連携も密になり、医師派遣による人材確保が容易になります

 

【メリット】

開業準備や経営に関する負担が少なく、医師は時間的・経済的な余裕を持つことができる

・医師1名体制からのリスク分散ができる

人材確保が容易になる

複数医師による専門性の多様化で地域医療に貢献できる

 

【デメリット】

・経営に関する意思決定者の影響力は弱くなる

・従来の開業スタイルの個人開業より収入が低くなる可能性が高い

責任の所在が曖昧になり、医療に欠かせないホスピタリティや接遇力による差別化が図りにくい

 

【どのような医師に向いているか】

・開業したいが、時間的・経済的な負担を軽減したい医師

安定した収入を確保したい医師

・経営よりも診療に専念したい医師

・病院での専門性を活かしながら、地域医療に貢献したい医師

 

医師の働き方改革により、ワークライフバランスを重視する医師は増えています。また、物価高騰による固定経費や人件費の高騰、人口減少、診療報酬の厳格化といった時代的な背景も相まって、これまで以上に医療経営に関する専門知識やスキルを持つ人材の必要性が高まっています。

 

したがって、新たな開業スタイルを模索する医師は増えていくと予想されます。

複数の診療科が集結する「医療モール」

2つ目の開業スタイルとして注目されるのが、医師の母校や大学病院近くの「ビレッジ型医療モール」で開業する方法です。ビレッジ型医療モールとは、複数のクリニックが1つの敷地内に集積された医療複合施設のこと。これは「病診連携」を強化できる点が特徴的です。

 

超高齢社会の進展に伴い、多疾患併存の患者が増えていることから、同じ敷地内にさまざまな診療科が集まりワンストップで多くの医療サービスを受けられるビレッジ型医療モールは、地域住民にとっても必要な環境といえます。

 

また医療モールは、上記のような理由で「集患効果が高い」という経営上の大きなメリットがあるほか、集患コストの削減も期待できます。

 

地域医療構想による連携強化の必要性や、超高齢社会による多疾患併存患者の増加について課題意識を強く持つ医師に適したスタイルと言えるでしょう。

 

【メリット】

病診連携の強化でより質の高い医療を提供できる

複数の診療科による集患効果が期待できる

多疾患併存の患者に対する充実した医療サービスの提供ができる

 

【デメリット】

・医療モールの方針に従い、経営の自由度は低くなる可能性がある

・医療モールへの出店費用や共益費などがかかるため、初期投資が高くなる場合がある

 

【どのような医師に向いているか】

病診連携を重視したい医師

・人口減少時代において集患に不安がある医師

医療サービスの多様化に貢献したい医師

医師派遣、医療モール…選ぶならどっち?

どちらの開業スタイルがいいかは、医師の価値観やキャリアプラン、そして時流のなかで起こるさまざまな課題やニーズによっても異なります。

 

上述したそれぞれの開業スタイルのメリット・デメリットを理解し、自分にとって最適な選択をすることが大切です。

 

時流は常に変化し続けていますから、柔軟な発想で時代に適応できるよう、変化に対応し積極的に情報を集めていくことをおすすめします。

 

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著者:伊佐 常紀

船井総合研究所

提供:© Medical LIVES / シャープファイナンス