地域医療から急性期医療まで、多様な診療経験
私は岐阜県の出身です。自治医科大学卒業後は岐阜に戻り、郡上市の最北部にある県北西部地域医療センター・高鷲診療所の1人診療所長を務めていました。この診療所は高鷲町の数少ない医療機関の1つで、多くの地域住民を受け持ち、かかりつけ医として、赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる年齢層・症状に対応し、全科にまたがる診療を行っていました。
いわゆる「へき地医療」を通じて「家庭医療とはなにか?」を学び、人としても大きく成長することができました。4年間の高鷲町での僻地診療の経験後には、内科をさらに深く学びたいという思いが芽生え、岐阜県羽島の松波総合病院に移り、2年間にわたって総合プロブレム方式を学びました。
その後、総合内科診療をさらに磨くため、総合内科で有名な栃木医療センターに移り、計6年間、内科と救急科での急性期診療を主に、緩和ケアチームのリーダーも務め、がん治療や疼痛緩和にも積極的に携わってきました。また近隣のクリニックで週1回、小児外来や乳幼児健診も担当させていただきました。
「その人の専門医」として、患者様それぞれの色を輝かせる
地域医療から急性期医療まで、多種多様な患者様と接するなかで、私は専門領域に特化するよりも、広く総合的に診療することに魅力と使命を感じてきました。生理学、病理学、解剖学も改めて学び直したことで、さまざまな臓器の繋がりを意識した、内科学の深い理解に基づいた診療を日々実践するようにしています。
私が目指しているのは、ズバリ特定の病気や臓器の専門家ではなく、「その患者様の専門家」になることです。患者様やご家族様にとって最善のバランスがとれた医療を提供したい──その思いから、2025年5月、「なないろファミリークリニック」を宇都宮市に開業しました。
「なないろ」という名称には、患者様1人ひとりが異なる“自分の色”を持っており、それぞれの色が輝けるような診療を提供したいという思いと、クリニックが七色の光に照らされたような、明るく心温まる場所でありたいという思いが込められています。ロゴマークに描かれた七色の模様は、患者様・医師・スタッフが手を取り合ってともに治療に向き合う姿をイメージしています。
診療所は、患者様だけでなく、働くスタッフにとっても心温まる場所であるべきです。そうであって初めて、チーム全員が力を合わせて患者様の“色”を輝かせ、笑顔に導けると信じています。そうした思いを込めて、「信頼の医療で心まで笑顔に」をクリニックの理念としました。
なないろファミリークリニックの強みとなる「4つの特長」
①家庭医として、プライマリーケアを実践
当クリニックの特長の1つは、プライマリーケアを実践する家庭医であるという点です。
プライマリーケアとは、「患者が抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族および地域という文脈の中で責任ある診療を行う臨床医によって提供される、総合的かつアクセスしやすい医療サービス」と定義されています。
プライマリーケアを理解するために重要な用語に、「ACCCA」というものがあります。これは、プライマリーケアの5つの理念であるAccessibility(近接性)、Comprehensiveness(包括性)、Coordination(協調性)、Continuity(継続性)、Accountability(責任性)の頭文字を取ったもので、ACCCAの詳しい説明は省略しますが、私はこのACCCAを常に意識して、患者様1人ひとりに丁寧に向き合っています。
②「疾患」ではなく「人」を診る医療
2つ目の特長は、先述の通り「患者様の専門医」として、「疾患」だけでなく「人そのもの」を包括的に診るという姿勢です。その実践の一環として、当クリニックでは漢方・東洋医学のアプローチも取り入れています。
たとえば、更年期障害やPMS、心身症、アレルギー疾患、あるいは「なんとなく調子が悪い」といういわゆる「未病」の状態など、西洋医学だけでは対応しきれない症状に対して、漢方薬を適切に活用することで治療の幅を広げています。東洋医学の「人を診る」という視点は、私たちの医療理念とも高い親和性を持っています。
③ポリファーマシーの予防
3つ目の特長は、ポリファーマシーの予防を重視している点です。
ポリファーマシーとは、1人の患者が多数の薬を服用することで、副作用や相互作用といった有害事象のリスクが高まる状態を指します。現在、高齢者の半数以上が5種類以上の薬を服用しているとされ、たとえそれぞれの薬が必要であっても、全体としての薬剤バランスには十分な配慮が必要です。
私たちは、漢方の活用も含めて、必要最小限の投薬で心身のバランスを整える医療を目指しています。
④エコーの積極活用
そして4つ目の特長は、エコー(超音波診断装置)の積極的な活用です。
エコーにより、聴診やレントゲンでは確認しにくい病変も可視化でき、より正確な診断が可能になります。大病院でCTやMRIを撮らずとも、クリニックの診療のなかで診断の幅を広げられるので、患者様の利便性向上にもつながっています。
「メディカルモール鶴田」での開業を決めた理由
開業にあたり、コスモス薬品さんの物件である「メディカルモール鶴田」に決めたのは、いくつもの好条件が重なったことがあります。
まず、自分の理念にあったファミリーの多い地域性だったこと。そして、地盤や水害などの天災にも配慮された物件であったこと。また、土地の広さや視認性が非常によいうえ、自宅からの通勤距離がちょうどいいのも魅力的でした。
いま、患者様の9割近くがお隣のコスモス調剤薬局さんを利用されているようですし、薬をもらうまでの間に併設されているドラッグストアで買い物をするという方も多いです。生活全般を支えるインフラのような集客施設に併設する形で、クリニックを開業できたメリットは非常に大きいと感じています。開院からまだ日が浅いですが、今後、患者様が増えても、わざわざ第2駐車場を確保する必要がないほど、広大な駐車場を利用させていただけるので、安心感があります。
皆さんの笑顔を見られることがいちばんの喜び
開院したときも、内覧会含め、前後1ヵ月のあいだに全力でコスモスさんがバックアップやPRをしてくださったのは、本当にありがたかったです。
とはいえ、苦労がなかったわけではありません。クリニック理念にもあるように、私は「スタッフさんたちとともに、よいクリニックを作る!」という思いが強かったことから、開業準備を進めるなかでスタッフの人選は大変でした。
幸い、元の職場の知り合いの方々のご縁で、素晴らしいメンバーとともにクリニックスタートを切ることができましたが、いま考えると、もう少し早い段階からいろいろなご縁の方に声をかけていく方法もあったな、と思います。
私は、「人」が大好きで、「皆さんの笑顔」を見られることがいちばんの喜びです。
今後も総合内科医として、患者様1人ひとりに向き合い、笑顔が溢れる医療を提供していけるよう、努力し続けていきたいと思っています。
プロフィール
・2010年 自治医科大学 卒業
・2010年 岐阜県総合医療センター 初期研修
・2012年 県北西部地域医療センター和良診療所
・2013年 県北西部地域医療センター高鷲診療所 所長
・2017年 松波総合病院 総合内科 医長
・2019年 国立病院機構栃木医療センター 内科
・2025年 なないろファミリークリニック 院長
所属学会・資格など
・総合内科専門医
・プライマリケア認定医
・臨床研修指導医
・緩和ケア研修会 修了