お金の管理が苦手で家計は妻に任せきり。それでも、できる限り節約に協力してきた夫。「うちはお金がない」と長年言われ続けてきた中、突然「家を買わない?」という妻に、思わず苛立ってしまいます。ところがその言葉の裏には、思いもよらぬ事実が……。今回は、そんなエピソードを通じて、「家計を任せること」のリスクと向き合い方について、小川洋平FPが詳しく解説します。
どこにそんな金があるんだよ…小遣い月2万円で半額おにぎりとパンがお昼の定番、涙ぐましい節約に耐えてきた年収500万円・56歳会社員。妻の「家を買わない?」に半ギレも“まさかの告白”に拍手喝采【CFPの助言】
家計は“見える化”と“自律的な管理”がカギ
高田さんの妻のように、堅実に家計を管理し、未来を見据えて積み立ててくれるパートナーがいるのは非常に心強いことです。ただし、それを当然と受け止めるのではなく家計を一緒に把握・共有する姿勢も必要です。
もし、自分のやりたいことを我慢し続け、「サイフを握る側」に従うだけの生活になっているとしたら、それは信頼して任せているというより、自分の人生を自律的に生きられていない状態とも言えるでしょう。
家計の現状がどうなっているのか、毎月いくら支出があり、どの程度貯蓄ができているのか、そして将来のライフイベントに備えて、どんな支出がいつ発生するのか……。 こうした情報を家族で共有し、自分のライフスタイルに合わせ、支出に優先順位をつけ、そして不足するようであれば収入を増やすという選択肢も当然あり得るわけです。
自律的に収支をコントロールして管理することが、家計管理の本質的な考え方であるべきです。どちらかに決定権を委ねて言いなりになることとは、まったく違います。
また、教育資金や住宅費、老後資金といった「人生の三大支出」については、あらかじめ金額をシミュレーションし、できるだけ早く準備に取りかかることが重要です。目先の支出だけでなく、数年先、十数年先を見据えたお金の準備を進めておくことで、不測の事態にも慌てずに済みます。
老後の資金がもしも不足しそうならば、働く年数を伸ばしたり、引退後も無理なく働ける環境で僅かでも収入を得る、公的年金を繰り下げ受給するなどの選択肢もあり、何も貯めるだけがすべてではありません。
また、将来の資金を貯めるならば、インフレや金利変動への備えとして、預金や保険商品だけでなく、NISA等も取り入れることも効果的です。 自分が望む人生のために収支を管理し、最大限自分らしく生きるための計画を立て、実行していくことが満足度の高い人生を送るために重要なことです。
「任せる」だけじゃなく、「ともに描く未来」が家計管理の本質
今回は、しっかり者の妻のおかげで人生のお金の問題をクリアできた高田さんの事例をお伝えしました。
このケースのように奥さんや旦那さんのどちらかが家計を管理して、任せきりにしてしまうこともあるかもしれません。ですが、家計簿をつける作業をどちらかに任せるとしても、定期的に家計をチェックしてどう収支をコントロールしていくかを考えていくことが大事です。
家計を任せるのは、相手を信頼しているからこそでしょう。ただし、それは「自分には関係ない」と切り離してしまうこととは違います。「一緒に未来を築いていく」という意識のもとで家計を共有していくことが、本当の意味での信頼だと言えるでしょう。
小川 洋平
FP相談ねっと