日本の総消費額は2025年をピークに、本格的な減少局面に突入します。この変化の鍵を握るのが、「単身世帯」と「高齢世帯」の急増です。かつて「若者のもの」だった一人暮らしは今や高齢者が多数派となり、2050年には60歳以上の消費が全体の半数に達します。本稿では、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、世帯構造の変化が家計消費に与える影響について詳しく解説します。
増え行く単身世帯と家計消費への影響-世帯構造変化に基づく2050年までの家計消費の推計 (写真はイメージです/PIXTA)

2040年の家計消費は単身が3割、シニアが半数、世帯構造変化応じた供給が鍵

本稿で見たように、未婚化や核家族化、高齢化の進行で単身世帯が増加している。単身世帯は2020年では38.0%だが、2030年には4割を超え、2050年には44.3%となる。また、単身世帯は、かつては若年男性が多かったが、現在は60歳以上の高年齢女性や壮年男性が多く、2040年には60歳以上の割合は半数を超える。

 

家計消費における単身世帯の存在感も増しており、現在は家計消費全体の3割弱だが、2040年頃には3割を超える見通しである。また、高年齢世帯の存在感も増し、二人以上世帯と単身世帯を合わせた60歳以上の消費額の割合は現在では4割未満だが、2050年にはおよそ半数に達する。

 

さらに、国内家計最終消費支出を世帯類型別に分解して将来推計を行うと、2025年頃をピークに減少に転じ、2050年にはピーク時より約15%減少する見通しである。この要因には、これまでは高齢夫婦世帯や単身世帯などの世帯人員の少ない世帯が増えて消費がかさむ効果で消費全体が増えていたが、今後は人口減少による消費縮小効果が上回ることがあげられる。

 

日本の消費市場の縮小に歯止めをかけるには、可処分所得は一時期より増加しているものの、消費支出が減少傾向にある現状を踏まえるとともに、今後も増加が見込まれる単身世帯の実態を丁寧に捉え、そうした世帯特有のニーズに対応した商品・サービスを拡充していくことが有効である。

 

かつては、単身世帯といえば若年層のひとり暮らしというイメージが一般的だったが、現在では高齢女性と壮年男性が半数を占め、今後は高齢者の割合がさらに高まっていく見通しである。したがって、単身世帯の消費市場を考えるにあたっては、多くが高齢者であるという量的な構造を正しく把握することが第一の前提となる。

 

加えて、単身世帯に共通する消費志向だけでなく、性別や年代といった属性ごとの違いにも十分に留意し、それぞれに適した商品・サービスを展開することが重要である。