油断は禁物…“余裕の老後”に潜む落とし穴

長年続いた「低金利時代」や晩婚化などさまざまな影響から、昨今定年後も住宅ローンの返済が継続するケースが増えています。

そのため、先述した総務省の調査結果のように、定年後の家計収支はマイナスとなる世帯は少なくありません。「老後のお金」を考える場合、いかに赤字幅を縮小するかがカギとなるのです。

一方、現状ではなんの問題もなさそうにみえる田中夫婦も「1,500万円あれば生涯安心か」というと、決してそうともいえません。これから先も2人で元気に暮らしていければなによりですが、医療・介護リスクをはじめ、災害リスクや犯罪リスクにも備えておきたいものです。

「投資詐欺」にもご用心

また、子どもの独立をきっかけに「投資」を始めた田中夫婦ですが、SNSの普及などを背景に近年「投資詐欺」の被害が急増しています。

昔に比べ手口が巧妙化する一方で、インターネットやSNSに躊躇のない高齢者が増えており、「退職金」などのまとまったお金をターゲットに被害が大きくなる傾向にあります。

せっかく貯めた老後資金が水の泡になってしまうことは避けたいところです。「絶対に儲かる」「簡単に儲かる」投資はありません。

少しでも怪しいと感じたら、日を改め、子どもや信頼できる人への相談や同席してもらうよう依頼しましょう。また、証拠となるメッセージや画像を残しておくことも有効です。

田中夫婦が決断した「お金の使い道」

田中夫婦は「老後は社会とのつながりが大切だ」と、地域ボランティアに参加することにしました。少額ながら、地域ボランティアへの寄附も検討しています。「“いくらあれば安心”というよりも、生きたお金の使い方をしたい」と夫婦は言います。

「介護ボランティアは自分たちの“この先”をイメージするのに役立つし、地域の子どもたちと触れあうことも多いので元気をもらっています。また、同世代の仲間と定期的に会うことで情報交換ができるし、もしものときも助けあえると安心感につながっています」

夫婦はこれからも地域とのつながりを大事にしながら、自分らしく老後の暮らしを楽しみたいと前向きです。

日本の平均寿命は今後も延びていくと見込まれています。心も身体も健康で毎日を送れるよう、お金についても余裕をもって準備を進めておきたいところです。

大竹 麻佐子
ゆめプランニング 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP🄬)
相続診断士