一時期メディアで騒がれた「老後2,000万円問題」をはじめ、老後の資金繰りに不安を抱えている人は多いでしょう。一方、自分に必要となるであろう具体的な金額を把握している人は意外と少ないようです。貯金2,000万円未満でも「お金が余って困る」と笑う60代夫婦の事例をもとに、老後に必要な“本当の金額”とその準備方法をみていきましょう。ゆめプランニング代表の大竹麻佐子CFPが解説します。
お金が余って困ります…年金月23万円、貯金1,500万円の60代夫婦「老後に2,000万円もいらない」と笑うワケ【FPの助言】
定年で“完全リタイア”した60代夫婦の老後
東京都内に住む田中夫婦(仮名)。元会社員の夫(67歳)と専業主婦の妻(66歳)の年金収入は、2人あわせて月23万円です。ひと月あたりの生活費は月18万円で、普段は読書やガーデニングを楽しみつつ、年に1度は国内外への旅行を楽しんでいます。
年金で生活費が賄えていることから、約1,500万円の貯金はほぼ手つかず。将来の医療・介護費や持ち家の修繕など、万一の事態にも問題なく対応できそうです。
「使わないのはもったいないし、もっと贅沢しちゃおうか」
田中夫婦は笑いながらそう話します。
夫婦で月18万円の生活費…きつくない?
田中夫婦がこうした“余裕の老後”を過ごしているのには、50代でおこなった「支出と資産の見直し」がありました。
子育てが落ち着いたこともあり、保険や通信費などを見直すことにした田中夫婦。こうした固定費の見直しでまずは月々3万円の削減に成功しました。さらに、食費などの変動費も、“ムリ・ムラ・ムダ”をなくすことを習慣化。ストレスなく減少させることができました。
そして、60歳の退職時に住宅ローンを完済。同時期に子どもが実家を離れ独立したことから、貯金の半分を段階的に投資に回すことにしました。
妻「投資といっても、年利2.5%程度の低リスク商品を選びました。大きな利益は期待できないけれど、大きく減ることもないし、なにより値動きに一喜一憂したくないって夫と話したんです。『気がついたら少し増えていた』くらいが、私たちにはちょうどいいねって」
夫「妻から『そろそろ定年後のこと考えなきゃね』って言われるまで、正直お金のことを真剣に考えたことはありませんでした。ちょうど定年のタイミングで老後2,000万円問題が話題になったとき『そんなにいるの!?』と焦って。でも、自分たちの場合は2,000万円も必要なさそうです。この歳になって、貯金がこんなに余っているとは思っていなかった。
『お金が余って困ります』なんていったら周りから怒られそうだけれど、“嬉しい誤算”です」