定年後の地方移住で「積年の夢」を叶えた元公務員

都内で公務員として働くシゲルさん(仮名)には、長年思い描いている夢がありました。それは、地方移住です。

物価の高さや、常に人で溢れる東京での暮らしに疲れ、いつしかその願望は、固い決意となっていたといいます。結婚はしておらず、関東近郊にある実家は兄が継ぐことが決まっているため、特にしがらみもありません。

そして60歳を迎え、シゲルさんはめでたく定年退職。シゲルさんは数ある候補地のなかから、都会と田舎の適度なバランスと、「どうせ移住するなら心機一転遠いほうがいい」と、福岡市に移住することを決断しました。

移住先を終の棲家にしようと考えたシゲルさんは、「庭付き一軒家」を現金で一括購入することに。退職金の2,500万円に加えて、現役時代に貯めた貯蓄が約3,000万円あることから、退職金が消えることにためらいはありません。2,500万円のほとんどを、住宅購入資金のほか新しい生活基盤構築のために費やしたそうです。

「これからは、自分のために時間を使うぞ」

シゲルさんの胸は期待で大きく膨らんでいました。

「理想の生活」に生じた綻び

移住してしばらくのあいだは、まさに「理想そのもの」でした。引っ越してすぐに九州各地を巡り、温泉やその土地ならではの食事、名産品、景色を満喫。シゲルさんには収入がないため貯金残高は恐ろしいスピードで減っていきますが、本人は特に気にしていませんでした。

しかし、行きたい場所を一巡し、家で過ごす時間が増えるにつれ、理想の暮らしの“綻び”が生じはじめます。

まず、ちょっとした買い物にも車移動が必須です。しだいに街の中心部に出ること自体が億劫になりました。

「今日はやめておくか」

こうして、家から出ない日がだんだんと増えていきました。