冗談だろ…息子が実家で目にした「衝撃の光景」

週末、紀彦さんは母の暮らす実家を訪れました。インターホンを鳴らすと、ほどなくして玄関の扉が開きます。

「まあ、紀彦! どうしたの、急に」

驚きながらも笑顔で迎えた母・香代さん。その腰元には、さりげなくブランドロゴの入ったエプロンが巻かれています。

さらに、リビングに通されたあと出てきたのは、ロイヤルコペンハーゲンのカップに注がれたコーヒーと、フォションのマカロン。その“実家にそぐわない”組み合わせに、紀彦さんは思わず眉をひそめました。

さらに室内を見渡すと、違和感は確信へと変わります。居間の一角には、バカラのクリスタル花瓶やキャンドルホルダーがずらり。壁際の棚にはエルメスのスカーフが美術品のように飾られています。

「母さん、冗談だろ……。これ、全部……俺の仕送りで買ったのか?」

唖然としながら問いかける息子に対し、香代さんは少しも悪びれた様子を見せません。

「生活に彩りが欲しくなったのよ。やっと自分の好きなものに囲まれて暮らせるようになったの」

そう言って満足げに微笑む母は、これまで紀彦さんがみたことのないギラギラした笑顔です。紀彦さんは、動揺を隠せません。

毎月20万円の仕送りは、母の穏やかな老後のためにおこなっていたものです。しかし、実際は贅沢品の購入に消えていたことがわかり、紀彦さんは怒りに声を震わせ言いました。

「母さん、いままでこんなものに興味なかっただろ!? いったいどうしたんだよ」

息子の問いかけに、香代さんは少しうつむきながら答えました。

「……近所の人たちに自慢したかったのよ。ずっと我慢してきたから、少しぐらい好きなものを持ってもいいかなって」

長年、家族のために質素な生活を貫いてきた母。夫の死による孤独感と長年の我慢の反動が、封じていた物欲を解放してしまったのでしょう。

さらに驚いたのは、父の遺産や貯蓄として3,000万円あったはずの資産が、すでに500万円ほどに減っていたこと。自身の仕送りだけでなく、父の遺産までも食いつぶしていることを知り、紀彦さんは言葉を失いました。いくら危機感を訴えても、母はどこか他人事のような返答を繰り返します。

(これはさすがにマズい……)

自分が言っても聞かないと感じた紀彦さんは「専門家に説得してもらうしかない」と考え、母をファイナンシャルプランナー(FP)のもとへ連れていくことにしました。