厚生労働省「国民生活基礎調査(令和元年)」によると、全世帯のうち約2.4%の世帯が「親への仕送りをおこなっている」そうです。そんな「親への仕送り」について、苦労をかけた母親への恩返しとして「月20万円」の高額な仕送りを続ける青山さん(仮名・55歳)の事例を紹介します。母を想う気持ちが招いた“まさかの悲劇”をみていきましょう。※プライバシー保護のため登場人物の情報を一部変更しています。
冗談だろ…〈年金月10万円〉と〈仕送り月20万円〉で暮らす78歳母から「お金が足りない」と催促が。怪しんだ55歳息子が“こっそり”帰省→実家で目にした“まさかの光景”【CFPが警告】
冗談だろ…息子が実家で目にした「衝撃の光景」
週末、紀彦さんは母の暮らす実家を訪れました。インターホンを鳴らすと、ほどなくして玄関の扉が開きます。
「まあ、紀彦! どうしたの、急に」
驚きながらも笑顔で迎えた母・香代さん。その腰元には、さりげなくブランドロゴの入ったエプロンが巻かれています。
さらに、リビングに通されたあと出てきたのは、ロイヤルコペンハーゲンのカップに注がれたコーヒーと、フォションのマカロン。その“実家にそぐわない”組み合わせに、紀彦さんは思わず眉をひそめました。
さらに室内を見渡すと、違和感は確信へと変わります。居間の一角には、バカラのクリスタル花瓶やキャンドルホルダーがずらり。壁際の棚にはエルメスのスカーフが美術品のように飾られています。
「母さん、冗談だろ……。これ、全部……俺の仕送りで買ったのか?」
唖然としながら問いかける息子に対し、香代さんは少しも悪びれた様子を見せません。
「生活に彩りが欲しくなったのよ。やっと自分の好きなものに囲まれて暮らせるようになったの」
そう言って満足げに微笑む母は、これまで紀彦さんがみたことのないギラギラした笑顔です。紀彦さんは、動揺を隠せません。
毎月20万円の仕送りは、母の穏やかな老後のためにおこなっていたものです。しかし、実際は贅沢品の購入に消えていたことがわかり、紀彦さんは怒りに声を震わせ言いました。
「母さん、いままでこんなものに興味なかっただろ!? いったいどうしたんだよ」
息子の問いかけに、香代さんは少しうつむきながら答えました。
「……近所の人たちに自慢したかったのよ。ずっと我慢してきたから、少しぐらい好きなものを持ってもいいかなって」
長年、家族のために質素な生活を貫いてきた母。夫の死による孤独感と長年の我慢の反動が、封じていた物欲を解放してしまったのでしょう。
さらに驚いたのは、父の遺産や貯蓄として3,000万円あったはずの資産が、すでに500万円ほどに減っていたこと。自身の仕送りだけでなく、父の遺産までも食いつぶしていることを知り、紀彦さんは言葉を失いました。いくら危機感を訴えても、母はどこか他人事のような返答を繰り返します。
(これはさすがにマズい……)
自分が言っても聞かないと感じた紀彦さんは「専門家に説得してもらうしかない」と考え、母をファイナンシャルプランナー(FP)のもとへ連れていくことにしました。