さまざまな理由で地方移住を検討している人は増えています。とはいえ地方移住のリスクは決して低くなく、きちんとした下準備ができていなければ後悔する可能性が高まります。定年後に静岡へ移住した65歳・水上夫婦(仮名)の事例をもとに、地方移住の実態と失敗しないためのポイントをみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
東京よ、さらば…〈年金月23万円〉〈退職金2,000万円〉65歳夫婦が念願の「静岡移住」を断行→1年後、新たな実家に立ち寄った33歳長男“まさかの光景”に絶句【CFPの助言】
1年ぶりの再会で驚愕…息子の目に飛び込んできた「まさかの光景」
―――自宅の敷地に併設された、小さなカフェ。そこには、カウンターの向こうでコーヒーを淹れる父・武司さんと、笑顔で常連客との会話を楽しむ母・愛子さんの姿がありました。
想像していた“のんびりした老後”とはまるで違う、活気に満ちた第2の人生のワンシーンに、長男は言葉を失います。
「いやいや……え、どういうこと?」
両親の表情はかつて見たことがないほど穏やかで、それでいてエネルギッシュです。都心での忙殺されていた日々から一転、いまは心から湧き出る笑顔が、2人の表情に自然と浮かんでいます。
予想外すぎる展開にしばらく呆然としていた息子でしたが、両親の姿をみながら大きく胸をなで下ろしました。
「幸せそうでよかった」
まだ見ぬ老後のために…実は早くから動き出していた水上夫婦
実は水上夫婦は、老後を見据えて早くから準備を始めていました。きっかけは、定年が近づくなかで将来への漠然とした不安を抱えていた武司さんが、定年後の家計相談のために妻を誘って行ったFPへの相談です。
FPとともに毎月の支出を細かくチェックしていくなかで、通信費やサブスクなど、固定費に無駄が多いことが判明しました。
「この出費、本当にいまの生活に必要ですか?」
FPの言葉をきっかけに契約内容を見直し、毎月3万円の節約に成功。そのお金は年利3%の運用を目指してNISAで投資信託を積み立てることに。将来に備えた資産づくりがスタートしました。
さらに、30代のころ2人が選んだ住まいは中古住宅でした。そのため、余裕を持ったローン返済が可能に。当時はまだ地方移住など考えていませんでしたが、定年後にチャレンジしやすい環境が整っていたのです。
その後も夫婦で話し合いながら、いざというときにすぐ動けるよう、資金と生活の土台をコツコツと整えていったのでした。
そして退職後、都心と比べて物価の安い静岡への移住を決意。自治体の移住支援金100万円も活用し、より負担の少ない移住が実現できました。